山形市、A3からはみ出したところに。

本だけじゃ、まわりが見えない。

ソトコトを見てとんがりビルに行ってみたいと思った。まっぷるにも載っていた。多くの人にとって魅力的、山形に初めて来た人にとっても魅力的な場所とすでに位置づけられているのだ。

雑誌「ソトコト」を読むとここは「エリアリノベーション」がすごいと書いてあった。中心市街地循環バスを七日町バス停で降りてとんがりビルへ。「エリアリノベーション」はまだよくわからない。着いて、とりあえず階段を上ってみる。リノベーション。おしゃれ。ビルのお店はほとんどが閉まっていた。しかしガラスのドア越しに覗くだけでも面白い。そしておしゃれ。

1階のカフェ「nitaki」へ。木の壁かと思ったら、ギャラリーやお店へ通じるドアが閉まっているのだった。あからさまに閉まっている感じがなくていい。WiーFiのパスワードが壁のあちこちに書いてある。ケーキには山形で採れたのであろうプラムのコンポートやラズベリー。思っていた以上に豪華だった。コーヒーは苦めで、深い。


食べながらカフェの中を見ながら、岐阜のことを思い出す。カンダマチノート、まちでつくるビル、やながせ倉庫。みんな、負けていない。別に勝ち負けじゃないけど。素敵なものが岐阜にちゃんとある。特にやながせ倉庫は相当早い。リノベーションとか、リノベーションスクールとかが話題になるよりずっと前に始まって、今の形も他にない独自のものだ。
そして今思えばまちでつくるビルも早かった。これは今全国のあちこちでやっているリノベーションと似ている点もあるけれど、もう5年くらい前からやっている。
そしてカンダマチノートもできて、エリアリノベーションへの一歩を踏み出しているとも言える。しかもそれを、リノベーションスクールをやったわけでもなく、いまのリノベーション界隈の著名な建築家たちが(講演などには来ているようだけれど)特に実際的に絡むことなく、地元の人がやっている。

もしかしたらそのせいであまり知られていないのだろうか。まちでつくるビルなどにかかわる大前さんは全国のリノベーションの人の中でも名前が知られ始めていると思うけれど、やながせ倉庫の上田さんのことももっと知られてもいいんじゃないかなあと、そこで思う。上田さんにお話を聞いてみたい。昔一度インタビューをさせていただいたきりだ。ぜひ、もう一度。


お店を出て徘徊を再開。七日町の「水の町屋七日町御殿堰」。農業用水路がまちなかを流れているのを、石積み水路にして再整備したそうで、その脇に県産材の木造建築が。夕方で涼しくなってきて気持ちのいい感じだったけれど、反対側へ抜けることができないせいか、人通りは少ない。その後、長谷川家の邸宅をリノベーションした「紅の蔵」も見る。

翌日には「文翔館」も見る。大正3年の建物だが、歴史の展示があるだけではなく、現在も文化振興財団などが入っていて、会議室として現代的にきれいに整備された部屋もあった。耐震などがしっかりしていなければこんなことはできない。お金をかけて整備したのだろうか。

他にも、まちを走っていると大正っぽいモダンな建物が今も使われているのにいくつか出会った。とんがりビルだけではない、リノベーションと言って界隈の人が想像するリノベーションだけではなく、行政によるお金をかけたリノベーション、いろいろな建物をいろいろな形にリノベーションすることが、あちこちで脈々と行われているまちなのだ。

それだけではない。閉店した大型店舗の建物も複数見た。そうした中でどうまちを元気にしていくかということは、切実な課題だったのだろう。今も百貨店が二つあり、それ以外に若者向けの店が入ったビルもあった。「全国にあるものを山形でも買える」という地元の人にとっての利点と、「ここにしかないものがある」という内外両方の人にとってのまちの魅力づくりを、どのようにしていくのか。でも、一人で全てをできるわけではない。


最後にBOTA COFFEEさんを訪ねた。リノベーションされた空間を店長さんが一人で切り盛りしていた。お知り合いの方が次々と来店、そして仕事が途切れるとパソコンに向かって何か経理関係の処理をされているようだった。こんな空間が私の家のそばにもあったらいいのに。コーヒーは苦くないのに、深かった。

一つを、ちゃんと魅力を発する一つにすること。できるなら、そこから周りへと光を発することができるような、一つにすること。
それがないと始まらない。

私も、そんな一つを創り出して置けるように。

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