なんで、私? 「岐阜市未来のまちづくり懇談会」に出席してきた。

大学の教授、銀行の部長、農協の部長、市議会の委員長、その横に私。
場違いという言葉しか見当たらない。

岐阜市の未来に向けた計画の会議。

これは、7月12日に開催された、令和5年度第1回「岐阜市未来のまちづくり懇談会」でのこと。どういう懇談会なのか、少し周辺も交えて説明すると。


岐阜市の、昔でいう総合計画のような、まちづくりや政策の最上位概念となるものが「岐阜市未来のまちづくり構想」。2022年度に策定された。

この中では、岐阜市の将来像として、2040年ごろに「人がつながる 創造が生まれる しなやかさのあるまち」になることを目指すとされている。それに基づいて、まちづくりの基本的な考え方や、各分野でどんなことをするかというざっくりとした方向性などが書かれている。

この下に位置づけられるのが、「岐阜市まち・ひと・しごと創生総合戦略」と「岐阜市SDGs未来都市計画」。
岐阜市まち・ひと・しごと創生総合戦略」は「人口減少対策のアクションプラン」で、まちの暮らしやすさや産業などに関して、施策やKPIなどが書かれている。
岐阜市SDGs未来都市計画」はその名のとおり、自治体SDGs(SDGsの17の目標を達成するための自治体の取り組み)を推進するための、具体的な策やKPIなどが記されている。この中では、2030年のあるべき姿を「シビックプライドとWell-beingに満ちた持続可能なまち」としている。

「岐阜市まち・ひと・しごと創生総合戦略」と「岐阜市SDGs未来都市計画」は、今年度、計画を見直すことになっている。
これらの三つの計画の推進、そのうち二つの計画の見直しにあたり、「専門的かつ幅広いご意見をいただくため」開催されているのが「岐阜市未来のまちづくり懇談会」である。

なぜ、私が。

最初に出席の打診があったのは、前職の最終出社日の帰り道であった。
首都圏在住者の、岐阜市で副業・兼業が可能な人として「ふるさと岐阜市活躍人材バンク」に登録しているとはいえ、「なぜ?」とまず思う。しかし、これからフリーランスになるという、まさにそのとき。「呼んでいただけるなんてありがたい」と、すぐに承諾した。
会の1ヶ月ほど前になり、正式に出席の依頼があったが、なぜ私なのかはまださっぱりわからない。万が一、元市職員ということを先方が知らないで依頼していて、そんな人物ではまずい、とかいう事態になったら申し訳ない。
どういう役割を期待されているのでしょうか? 何か勉強しておくことはありますか? とメールすると、事前にオンラインでお話しできることになった。ありがたい。

会の1週間ほど前、担当の方とオンラインでお話。「前、企画部にいらっしゃった方ですよね?」と言われてほっとする。
当日の資料について、丁寧にご説明いただく。いろいろお話ししていて、どうも、女性の出席者の割合を増やす必要があるらしい、と推測した。
岐阜市の子育て環境などについても、首都圏と比較して何か感じることがあったら教えてほしいというお話があった。編集者やライターというより、岐阜とゆかりがあって、首都圏で子育て中の母親としての視点があればいいのかな、と思ったら、少し気が楽になった。

出席者一覧も見せていただいた。すごい方ばかりというのはなんとなくわかったが、正直なところ、その雰囲気があまり想像できなかった。後で調べてみると、昨年までは、人材バンクから別の方が出席されていたらしい。
出席者は順番に発言が求められるという。どうせなら、せっかくの機会だから、テーマと何とか関連づけて、今まで思っていたことで市に伝えたいことを言ってみようと思った。

市役所はクールビズかな、と思いつつ、7分丈のジャケットを出してきて、真面目に見えそうな服装と鞄を準備する。
当日は息子の送り迎えを夫がしてくれたので、早めに着いて、市役所の先輩とランチに行った。会のことを話していると、先輩の顔色が少しずつ変わってくる。
「それは、なかなか大ごとだね」
ここに至ってようやく、事態の大きさに気付く。

少し早めに会場のあるフロアに着くと、先日オンラインでお話しした担当の方が「こっちです」と呼んでくださる。行ってみると、会議室の中はしんとしている。物々しい雰囲気。時折交わされる、偉い人から偉い人への小声での挨拶だけが聞こえる。そんな中、企画部時代に隣の課でお世話になった先輩が「あれ?なんで?」と気付いてくれて、少し救われた気分になる。
担当の方に席に案内していただいて座ると、部長さんやさっきの先輩が挨拶に来てくださる。なんだこの状況。と思いつつも、市役所時代は逆の立場というか、このタイミングでは挨拶もできない担当の方と同じような立場でこんな光景を見ていたのを思い出し、挙動不審ながらもなんとかご挨拶する。さっきの先輩は、担当課のお隣の室長さんになっていた。

その後、隣の席にいらっしゃった先生が少し話しかけてくださるが、あとは資料をめくるなどして待つ。SNSでこんな写真見たことあるな、と思いながら、座席の名札の写真を一応撮る。シャッター音は消して。そっと部屋を見回すと、皆さんきちんとジャケットを着ていらっしゃった。クールビズどこいった。


そして会が始まる。
一応、思っていたことは、話せた。岐阜と川崎の子育て環境のこと。岐阜の関係人口になりたくて、なかなか関わる方法が見つからなくて、思っていたこと。

人前で喋るのは全然上手くないけれど嫌ではないのは、バンドマン経験の故。

そして、他の出席者の皆様もお話しされる。冒頭にも書いたが、偉い人といってもいろいろな専門の方がいらっしゃる。同じ資料に基づいた話でも、着眼点がそれぞれ全然違う。看護がご専門の先生は、こんな立場の方の意見が取り残されていないか?とか。他にも防災だったり、健康づくりだったり、地域の企業だったり。採用活動で出会う学生さんのSDGsへの意識についてお話しされていたり。一つの資料にも、こんなに、いろいろな見方があるのか、と、本当に勉強になった。

当日の議事録はこちらに公開されている。

計画の参考にする、市民意識調査の結果は。

資料も全てホームページで公開されているので、この中で私が注目したポイントを少しだけ書いてみる。
会では、2023年5月に実施された「岐阜市市民意識調査」の結果について説明があった。これは、無作為抽出した15歳以上の住民にいろいろ回答してもらうもので、毎年実施されている。その内容についての、2点。

1 岐阜市民の幸福度、急落。

市民意識調査の中に「現在、あなたはどの程度幸せですか」という設問がある。今回の調査では、0点から10点での回答だったが、6点以上の人が69.3%
以前は5段階での回答だったが、2021年度には 、6点以上に当たる人の割合は83.0%だった。(資料2 P3)

幸福度、急落。

2020年度は79.9%だったというし。
コロナ禍に、物価の高騰が追い討ちをかけているのでは、という話が出ていた。
それだけの理由なのか。気になる数字だ。

2 仕事と、幸福度。

調査の中に「あなたの「仕事」の過去の1年間の満足度をお聞きします」という設問がある。0(行っていない)または、1~5の5段階で回答するものだ。(資料3 P25)
0を除くと、回答の平均値は3.2。3(どちらとも言えない)の人が41.4%でもっとも多い。
この回答には、上記1の幸福度の設問の回答との相関関係が見られるという。つまり、仕事の満足度が高い人は、幸福度が高い傾向にあるということだ。

仕事が幸福感を左右するのか。。。なるほどな。。。と思った。
ちなみに「子育て」「家族の介護」「地域活動」「文化・芸術に触れる活動」などの満足度と幸福度には、相関関係は見られないらしい。(「家族の看護」の満足度との相関関係はあるらしいが)
会の中でも、この設問に触れて意見を述べている方がいらっしゃった。

一方で、「仕事」に関わる他の設問を見ると、「就労環境に恵まれたまちだと思いますか」という設問では、「思う」「どちらかといえば思う」を合わせて24.4%
同様の回答は、「商業や工業などの活力のあるまちだと思いますか」では12.2%。「企業などが新事業を展開しやすいまちだと思いますか」では12.6%
岐阜市の就労環境、産業発展に関わる環境は整っていないと、市民は感じている。

ここからは、私の思ったことですが。
仕事で市民の幸福度が上がるなら、その方向の充実にも取り組むべきなのだろうなあ、と思った。
今関わらせていただいている別のお仕事で、地域の中小企業の方にお話を聞く機会が多いから、余計にそう思うのかもしれない。

全体的に幸福度が下がっている中で、仕事に満足している人は、幸福度が高い。仕事って、長い時間を費やすものだからなあ、と最初はぼんやり思ったけれど。
仕事の満足度を左右するポイントって、例えば仕事の内容とか、対価とか、職場の環境とか。
昔、私が市役所にいた頃は、仕事は名古屋に通って住むのは岐阜で、という考え方を聞くことが結構あり、自分も割とそれに納得していた。

しかしコロナ禍を経て、長時間かけて通勤するようなライフスタイルの満足度はより下がっているのではないかと思う。
また子育てしながら働く人にとっては、通勤時間が長いとお迎えの時間が遅くなるし、何かあったときに保育園まで駆けつけるのも遅くなる。よりハードになると、身をもって知った。満足できる仕事なら、家の近くで働ける方が絶対いい。市内で働ける機会が多い、市内の産業発展、というのが、より重要になっているのだと思う。
もちろん、テレワークができるようになる、という方法もあるけれど。

満足する仕事で、生計を立てられて、安心して暮らせる人が増えるといい、と、自分を振り返っても思う。諦めたくない。

調べると、岐阜市では「ワークダイバーシティ」というのに取り組んでいるそうだ。「子育てや介護などの理由で、労働時間や場所に制のある人でも働きやすい」ように、テレワークを活用した短時間雇用を生み出す取り組みをしているのだ。全国を見ると、他のいくつかの自治体でも似たような取り組みが進んでいる。

誰にどう思われているか、わからないけれど。

そんなこんなで、会が終わる。
私が子育ての話をしたせいだろう、隣の席の先生が「うちの孫も〜」と話しかけてくださった。気遣いがありがたい。。。
周りの方にご挨拶して、室長になられた先輩が少しお喋りしてくださって、退室する。

その後寄った、鵜飼の担当課の方も、ご挨拶に伺った広報時代からの師匠も、会の話をすると「ええ…そりゃまた大変な…」という顔をしていた。
そして、その「大変」のニュアンスについていけていない自分に気付いてしまった。

市役所を辞めて9年。今はフリーランスになって、同僚もいない。「これをやったら誰かに何か言われるかな」「あの人に何て思われるかな」みたいな思考が、市役所の組織の中で働いていた頃に比べて、かなりかなり薄くなってしまった。
本当は、周りの出席者や職員の方々から、稚拙な意見だと思われているかもしれない。昨年までの出席者とはえらい違いだ、こいつを呼んだのは失敗だったと思われているかもしれない。でも、これが言いたいから言えばいい、みたいな気持ちの方が強くなってしまった。

でも市役所の中にいたら、仕事を進めるためには、いろいろな人の反応を伺って、先回りしたりフォローしたりして、うまく対応することが必要だ。
少しずつ少しずつ生まれていた、市役所時代の同僚との考え方の違いが、9年経ったら目に見えるくらいの大きさになっていた。

同じ場所で働いていたのに、違うところまで来てしまった。そのことに、ちょっと寂しくなる。
でも、後悔はしない。
そして、元同僚の皆様の考え方も理解できるし、尊重できる。

もう9年も経ったけれど、これからも仲良くしてもらえたら嬉しいなあ、と切に思う。

この会は今年度にあと2回開催される。
まあ、大きな粗相をしなければ多分、今年度は最後まで呼んでいただけるだろうから。
計画に反映されるかどうかはさておき。私の思うことを言ってみよう、と思う。
少しでも、お役に立つようなことを言えるように、普段から見識を広めて深めたい。。。

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