今年こそは池袋ジャズフェスティバルを見に行こう、と思ったが、3歳の子連れである。
うろうろされると身がもたないので、ベビーカーで。
最初に到着した池袋西口駅前広場でビッグバンドを見始めて2曲目で、息子は「もうおうちかえろー」と言い出す。
3曲目で移動する。池袋西口公園広場へ。
こちらもとてもかっこよかったが、息子は「はやくいこー」。曲が終わると再び移動して、他の会場も少しずつ回る。
さすが池袋ジャズフェスティバル、どのバンドも上手い。レベル高い。
そしてそれだけではないと、見ていくうちに気付いた。多様性がちゃんとある。年配の方々のバンドやアンサンブルもある。童謡もある。
今年の参加申込は、かなりの倍率だったと聞く。どんなバンドを選んでいるのか、少しずつ聞くだけでもなんとなくわかる気がした。
池袋子連れランチ難民。
予想より早く息子が「おなかすいた」と言い始めた。お昼どきど真ん中なので、どの店も混んでいる気はしたが、想定していた、東武百貨店の上の方のレストラン街に向かってみる。
ベビーカーなのでエレベーターに乗るしかない。しかし、レストラン街まで行かないエレベーターもあったり、途中で乗り換えようとすると下から乗ってきた人で満員で乗れなかったりと、着くまでに一苦労だった。
やっと着いたものの、想定より早い時間のせいもあり、まだまだ混んでいる。多少列の短そうな店に並び始めたが、息子が飽きてしまい、断念。降りるにもまた、エレベーターのところでまた長々と待った。
子連れで都会でご飯、を甘く見ていた。予約するくらいの準備が必要だった。東武百貨店を出て歩きながら、子どもが食べられそうな料理のお店を見つけても、1階のお店はどこも人が多い上、狭くてベビーカーで入るのは難しそうだ。ファミレスは2階より上にあるところが多く、エレベーターで行ってみても、混んでいてまた降りてくることになりそうで気が進まない。心折れて、確実に早く食べられるよう、コンビニご飯に方針を切り替える。
買って公園に向かい、だんだん駅から離れていくと、混んでいないすき家を見つけた。今後の参考に。
行ったのは西池袋公園。ベンチでご飯。レストランランチからコンビニおにぎりになったのに文句もなく「ひとおおかったね」という息子に救われる。
食後は公園で、持ってきたトミカを走らせたり、遊具で遊んだり。
都会のど真ん中だが、ある程度の面積がある公園で、遊具も充実している。地元の方なのか、遊びに来ている親子も結構いらっしゃった。
体力を使わせて、あとはベビーカーでのんびりしてもらうべく、親も力を振り絞って追いかけっこもした。滞在は1時間以上。雲行きは怪しかったが、なんとか雨も降らずに済んだ。
ライブを見る時間を稼ぐため、息子に投資。
疲れてきた息子が「もうかえる」と言い出したところでベビーカーに乗せて、昼寝してくれることを期待しつつ、再びジャズフェスの会場へ。しかし息子はまだまだ元気いっぱいで、到着して聞き始めてすぐ「もうかえろー」と。横でライブを見ていた女性が苦笑していた。
しかしもう少し見たい。勇気を出して、東武百貨店8階の会場へ移動。空いているエレベーターに乗ったら、会場のあるフロアにつながっておらず、7階で降りて移動。
7階には子ども向けのお店のゾーンがあった。NHK Eテレのキャラクターのいる遊び場「にこはぴきっず」の前で、壁の絵と写真を撮る。そこで目に入ったのが、スーパーボールをすくう子ども用のクレーンゲーム。建設車両が好きな息子、家では建設現場のおもちゃのクレーンをいじり倒している。ここでご機嫌になってくれればライブにも付き合ってくれるかも。「やってみる?」と言うと、目を輝かせている。100円を投資。すると1回で4個すくうことができた。
「すごいやん!」と言うととても嬉しそう。スーパーボールも大変気に入った様子。だめもとで「エスカレーター乗るから、ちょっとベビーカー降りて歩いてくれる?」と言うと、すぐに降りてくれた。なんと。
8階のライブ会場に着いてからも、スーパーボールをいじってご機嫌。2曲の間ライブを聞かせてくれた(3曲目で「かえろー」と言われたが)
全てが理想通りでなくても、生の音楽を。
多分、日本でも有数の、都会で行われるジャズフェスティバル。
演奏する側にとって、都会のジャズフェスティバルの魅力は、わざわざ見にきた人以外にも多くの人がそこにいて、多くの人に聞いてもらえることだろう。アクセスもいい。通勤・通学などでなじみ深い場所で演奏することが感慨深い人もいるだろうし、池袋の場合は長年開かれているから、憧れの場所だという人もいるだろう。
池袋のまちの人にとってはどうだろうか。住んでいる人というよりお店を出している人ということになるだろう。ジャズフェスをやっていることで人が増えて売り上げに反映されたりするのだろうか。東武百貨店は、8階で同時開催していた「昭和レトロな世界展」「クラシックカメラ展」だけでも人が多く、ジャズフェス会場との間の通路はなかなか前に進めないほどであった。それ以上の人が来ることによるメリットもやはりあるのだろうか。
また、ジャズフェスをやっているまち、ということでブランド感があって好感度が上がったりもするのだろうか。
見る側にとってはどうか。さまざまなところに住む人がアクセスしやすいかもしれない。ただ、都会や人混みが苦手な人にとっては、あまり嬉しいロケーションではない。
子連れとなると、昼食や休憩の場所を探すのも一苦労だ。感染症をもらってこないかという心配もより多くなる(新型コロナだけでなく風邪とか胃腸炎とかも)。
実はこの池袋ジャズフェスティバル1日目には、別のジャズフェスティバルも行われていた。岐阜県高山市の「飛騨高山ジャズフェスティバル」。
会場はJR高山駅から車で約10分の「飛騨の里」。豊かな自然の中に茅葺き民家、池などがある場所だ。
東京から大体4時間半。会場には、わざわざ来た人しかいない。出演者はプロばかり。同じ「ジャズフェスティバル」という名前でも、池袋と比べてみると違うことばかりできりがない。
もし二つのジャズフェスティバルが来年も同じように開かれたとしたら。かなうことなら飛騨高山ジャズフェスティバルに行きたい。人混みより、自然の中で音楽を聴きたい。クライマックスの盆踊り「飛騨やんさ」もめちゃくちゃ楽しそう。
でも、片道4時間半。それを子連れで、と考えると気が遠くなる。たとえ、もう少し近くに住んでいたとしても、会場近くに車を止めることができない。子どもを連れて、シャトルバスに乗るのに並んで、帰りもまたシャトルバスに乗って、というのも想像するだけで大変。そして子どもの寝る時間になるので、飛騨やんさよりずっと前に会場を後にしなくてはならない。
理想通りの環境のライブに行きたい、と考え始めたら、生のジャズ演奏からまた離れてしまう。それなら、生演奏を聞けるだけでもいいと思ってしまう。ライブハウスやコンサートホールではなく、自由に動けるフェスだからこそ、子連れでも見にこられた。
子連れとなると行ける範囲が狭まるけれど、子連れじゃなくても、いつでもどこでも行ける訳じゃない。それなら、行けるところで、そのときだけの出会いを楽しめたら。