つくろうとした時点でだめ。自然な積み重ねで居心地のいい空間を生み出し、挑戦する人の背中を押す「喫茶 星時」店長の樋口尚敬さん

いつからか通うようになっていた。岐阜市中心市街地の柳ケ瀬商店街、神田町通り沿いのシェアアトリエのビル「カンダマチノート」2階に「喫茶 星時」はある。
あるとき、お店にある石田意志雄先生の本を真剣に読んでいたら、店長さんが話しかけてくださった。調子に乗った私はインタビューをお願いしたのだった。

樋口尚敬さん

こだわりはない。つくりこむほどいびつさが増す

先日私が喫茶 星時を訪れたとき、お客さんはカップル、女性グループ、男性や女性の一人客など。20代らしい人が多かったが、50~60代らしい人もどことなく若々しかった。
星時に行くといつも、なんとなく居心地がいい。落ち着く。席について、なぜなのか、考えてみた。

・清潔感。
・行くといつもあの店長さんがいる。
・店長さんがにこにこしている。
・コーヒーを一口飲んで「おいしい」と思う。

・わりと静か。
・落ち着く音楽。(クラシックではない)
・一人用の席がある。
・何かしていたらほっておいてくれる。でも、帰るときに少し話しかけてくれるので、私のことが嫌で話しかけないのではないとわかる。


喫茶 星時の店長、樋口尚敬さんはどんなことを考えながらこの空間をつくっているのだろうか。接客のことから聞いてみた。

例えば、その人が話してほしいと思っているか。何かアイテムを持っていたら、今日はそういう目的なんだと理解します。あまり話しかけてもよくない時はそっとしておきます。
でも、こうしなければいけないということがあるわけではないのです。何か突き詰めてやっているというわけではなくて、今まで勉強してきたことをそのまま生かしてやっています。

これほど落ち着く空間をつくるのに、「突き詰めて考えているわけではない」というのは少し意外だった。

自由に過ごしてほしいです。喫茶店だから、日常の延長。空間をその人なりに楽しんでもらうというのが最優先です。こちらが主になってはいけない。こだわりが何かと聞かれると、ないんです。
コーヒーがうまい、ケーキがうまいというのはあくまでオプションです。接客も含め、ここで過ごしていただくためのオプションであって、お客さまがそれをいいと思うにこしたことはないけれど、それをがつがつと求めるものでもないんです。


ガトーショコラとコーヒー。エディブルフラワーが添えてある。

この空間も、自分では日常的な世界観の中に溶け込んでいると思っています。古道具は以前から好きで置きたかったのですが、ドライフラワーはもともとあったものではありません。もらい物が増えて、捨てるのももったいないし飾るか、というくらいでした。生花は育てられないけれど、ドライフラワーなら差すだけでいいですし。あとは、少し暗いと思ったらライトをつけてみたり。

つくろうとした時点でだめだと思います。「自然」ということでしょうね。つくりこめばつくりこむほど、いびつさが増してくる。意図的にこうしようと思うほど反対方向に進む。考えてはいけないんです。

こだわりを持って突き詰めて作為的に空間をつくっているのではない。自然に、日々積み重ねている。だからこそ、星時はこれほど落ち着く、居心地のいい空間になっているのかもしれない。

主張するのが苦手なんでしょうね。それに、0から1をつくりあげるのが苦手です。この環境の中で何かしてくださいと言われたら、多少はイメージが湧くのですが。

樋口さんは穏やかに謙虚に、そう話す。

カフェマニアから飲食業へ、独立へ

喫茶 星時の店長、樋口尚敬さんは岐阜県笠松町出身。高校卒業後は大阪の大学に進学して岐阜を離れた。卒業後は神戸市の証券関係の会社に入社し、事務の仕事に就く。そんなころ、大学の先輩から「カフェに行きたいんだけど来ない」と誘われ、「行きます」とついていった。先輩が雑誌のカフェ特集で見たという、苦楽園(兵庫県西宮市)にある「ノイカフェ」だった。

まだ言語化できていないんですけど、すごい居心地がよかったんですよね、自分にとってその空間が。
それまでは「お茶しよう」と言われたら、チェーン系のお店のイメージしかありませんでした。このとき初めて個人店のカフェに行ったんです。強い衝撃というよりは、後に残る思い出でした。

それをきっかけに樋口さんはカフェや喫茶店をめぐるようになり、その後の3年間で500~600軒を訪ねた。公共交通機関を使って神戸、大阪、京都、和歌山など関西一円に出向き、その記録をmixiやブログに書いた。

とにかく刺激的でおもしろかったです。カフェと言っても一軒一軒、全然表現が違って、みんながみんなすごい。どこに行っても絶対に何一つ同じものがないのです。
会社では社内サーバの更新などの仕事もしていて、当時の上司からはパソコンを触るようにと言われていました。それでmixiの日記にカフェのことを書いてみると反応をもらえて、ブログも書き始めて。いい循環ができていました。

数年後、会社の経営状況が変わり、樋口さんは退職することになった。岐阜に帰ってきた樋口さんは、「次は飲食業をやってみようかな」と考える。

個人店さんの働いている姿を見ていて「いいな」と思ったのもあります。そして、一度転職を経験しているので、次の仕事を辞めることに躊躇がなかったというのもあります。飲食の世界はとても厳しいと、カフェをめぐっていろいろな店主さんとお話をする中で聞いてはいたのですが、やってみてしんどかったらやめればいい、とりあえずやってみようと。

また、親が岐阜にいて子どもは僕しかおらず、親の面倒をみないといけない、地元に戻ったほうがいいなと思いました。
そのときは岐阜のことは何も知らなかったです。高校まで岐阜にいたけれど、学生の狭い世界でしかありませんでした。幼なじみ以外に交友できる友達もいなかった。でも、それがよかった部分もあります。昔のつながりがあったら、新しい交友関係を開くリソースは少なかったと思う。結果論なんですけどね。

すぐに開業することは考えていなかった。それまで会社で働いてきた樋口さんは「安定志向」。求人を探すうちに見つけたのが、県内に複数店舗を持つ珈琲専門店だった。

「ホットください」「アイスください」と言うのはなぜコーヒーなんだろうと、カフェ巡りをしながら不思議に思っていました。実は飲食業に勤めるまでコーヒーを飲んだ記憶がないんです。あまり好きではなくて、カフェではオレンジジュースやウーロン茶などソフトドリンクを頼んでいました。空間を楽しませてもらえれば飲み物は何でもよかったのです。
でも、飲めないから知らないではまずい、飲めなくても知っておく理由はあるだろうと思っていたときに、求人を見つけました。運がよかったです。
働き始めて、初めてブラックでコーヒーを飲んで「うまい」と思って、そこからコーヒーにはまっていきました。

この地域で先駆的にスペシャルティコーヒーの取り扱いを始めた店で、マスターも従業員がコーヒーの勉強をするのを応援してくれた。

「なぜホット、アイスと言えば…」という疑問への答えはなかなか見えませんでしたが、それだけ歴史があって、よく飲まれていたものだからなのかなと思いました。

このお店で大事にしていたのが接客です。でも僕は全然得意ではなくて、よく怒られていました。もともと事務職で、接客は大学時代にコンビニで働いていたくらいの経験しかありません。人と話すというのは全然できませんでした。
当時はラテアートができるようになり始めたところだったりして、もっと自分の技術力を上げたいと思っていました。しかし店長からは「まずは接客を固めないと」とずっと言われていて、葛藤や反骨心がありました。今でこそ接客の重要性がわかりますが、当時は全く理解できなくて。それでも、接客に対する意識はそこで教えられました。

その後、ケーキもつくれるようになりたいと考えた樋口さんは、店の常連の紹介で、ケーキも勉強できる別の店に転職。そこで3年間働くことになる。

2軒で勤める一方、樋口さんはイベントでの出店を行うようになっていた。最初は岐阜市にある惣菜店「マウアデリカテッセン(現maua)」で。その後、柳ケ瀬にある「ミツバチ食堂」の2階で1日カフェのイベントを行っていた。

「マウアデリカテッセン」では店内で買ったものを食べることができたのですが、小さいお店なのでドリンクを出していませんでした。面白そうだったので「ここでコーヒー出してみてもいいですか」と言ってみたら「いいよ」と二つ返事をいただいて。

それから、僕はリトルプレスが大好きなのですが、当時岐阜で少ないながらもリトルプレスを扱っていたのが、当時殿町にあった「古書と古本 徒然舎」さんでした。頻繁に訪れていたので交流が生まれて、それが僕と柳ケ瀬との接点になりました。
2013年の「ハロー!やながせ」というイベントのとき、徒然舎さんから「リトルプレスを貸してくれないか」と頼まれて、当時100冊以上持っていたものを貸したんです。その時に徒然舎さんから「ミツバチ食堂」オーナーの岡田さや加さんを紹介してもらいました。話しているうちに、岡田さんがコーヒーが好きだということもあって「よかったらイベントをしませんか」とお誘いをいただいたんです。「マウアデリカテッセン」さんでもやったことがあったので、同じノリで「やります」と言って、何回かやらせてもらいました。

しかし2軒目に移ってからは仕事が忙しく、なかなかイベントができなくなった。

カフェ・喫茶業は肉体的にも大変だし、組織の中で老後まで続けていくには金銭面や労働環境においても厳しいと感じていました。それで独立するか、業種をまた変えるかと考え始めたのです。物件があったら独立を考えようと、いろいろと探していました。

徒然舎で物件を探していると話して、紹介されたのが「カンダマチノート」だ。神田町通りに面する古いビルをリノベーションし、シェアアトリエとして再生させた建物で、近くの美殿町で「まちでつくるビル」を成功させた建築設計事務所「ミユキデザイン」がプロデュースしている。樋口さんはミユキデザインと面接し、入居が決まった。

そのときここはまだ何もない空間でしたが、それでも面白いなと思いました。そして、シェアアトリエという形態もいいなと。
モーニングは体力的に大変なので「絶対やらない」と思っていました。このあたりでモーニングをやらないというのは結構リスクがあるんです。でも、ここでは入居者さんが利用してくれるし、その周りの友達も利用してくれるかもしれない。そうすると最初の集客は助かるなと思っていました。喋れる仲間がいるのも大きいです。

入居が決まってからオープンまでの一年間には「月1回イベントをやってほしい」とミユキデザインから言われていた。勤務先での仕事は週休1日で、イベントの準備や開業準備を同時並行でしていると、ちゃんと休める日は月1回あるかないかだった。

「いきなり始めるより少しずつ知ってもらう方が、スタートがしやすくなるはず」と言われたので「じゃあやります」とやったのですが、すごく大変でしたね。
でも、自分の全般に通じることかもしれませんが、あまり深く考えないんです。そういう状況になったから、それをクリアするしかないよね、と。独立することが決まっているし、そういう条件であればやるしかない。その状況に落とし込んでいくしかないですね。

イベントを行う上で屋号が必要になり、つけたのが「喫茶 星時」だ。カフェではなく「喫茶」であることが樋口さんにとって重要だった。

カフェと喫茶に厳密な違いはほとんどないのですが、僕の中での違いは、カフェは非日常を楽しむものであり、喫茶は日常の延長を楽しむものである、ということ。小さい個人店の喫茶店で、パジャマで来るような人を見たことありませんか。あれが許されるのが喫茶店だと思います。あれって日常なんです。カフェにその格好で来る人はいませんよね。
美味しいものは毎日食べられないのと同じような感覚です。本当に心地いいものは強い刺激ではなく、どこまでも続けられるものだと思います。

そして「星時」の「星」は、大阪の「星霜珈琲店」(当時は「喫茶 星霜」)から一字もらった。

男性お一人でやっていらっしゃって、こんな風にやってみたいと憧れるお店だったので、あやかるような感じで、事後承諾をいただいて。それにつなぐ言葉で何がいいかと考えて、「星時」というのが自分の中でしっくりきたのです。
徒然舎さんに相談すると「イベントのときの屋号は確定したものではないからいつでも変えられる。まずは気軽に使ってみていいんじゃない」と言われて、決めました。
最初はそんなに強い思い入れがなくても、それと共に歩んでいくと愛着がわくというか、紐づけされていくものがあって。言葉が育っていくんです。正式にオープンするときも、名前はこれだなと思いました。

2017年4月、「喫茶 星時」はオープンした。

イベントで「やってみたい」人の背中を押す

オープン直後、樋口さんは集客に悩んでいた。入り口が2階で、店に入るには階段を上がるというハードルがある。さらに扉が重く、中の様子が見えない。なかなか入ってもらえず、人が通り過ぎてしまうことがよくあった。その打開策として樋口さんが考えたのが、イベントを開催して集客することだった。道に迷って諦めてしまう人も、イベントに申し込んであれば絶対に来るはずだと思ったのだ。
イベントといってもいろいろだが、樋口さんは、あまり一般に知られていない人を呼ぼうと考える。

読書会や音楽会など、メジャーな趣味のイベントで集客をしているところはたくさんある。よりよい環境、よりよい金額でやっているところと闘っても仕方がないと思いました。

岐阜駅にある生涯学習施設、ハートフルスクエア―Gは市民だと安く借りられることもあり、多くのイベントが開かれています。ただ、会議室や和室といった空間なので、そこに変化を持たせたいという需要もあるのではないかと思いました。
人を呼びたい思いもあって、自分が興味を持ったイベントの主催者に「低料金でもやりますよ、こちらでもイベントをやってみませんか」と、ツイッターなどSNSを通じてお声がけをしていきました。

そうして開催されるようになったのが、LGBTs当事者の居場所や交流の場の会「はろっと!ぎふ」だ。普段は主にハートフルスクエア―Gで活動しているが、夏休みや大型連休には、星時を貸し切りにして交流会を行っている。
他にもボードゲーム会、朗読イベントの開催なども樋口さんの声かけから始まり、長く続いている。

あまり一般的でない趣味の人たちの悩みは集客です。場所を借りたはいいけど赤字が大きくなったらどうしようと。こちらとしては、店がスタートしたばかりで来てもらうことが最優先なので、「赤字にならないようにするからやろう。正直、売り上げは少なくても全然いいので、まずやろう」と声をかけていました。
また、自分もイベントを毎月やっていたので、続けると少しずつお客さんが積みあがっていくのが経験則でわかります。「あのときは行けなかったけれど今回は行ける」という方がいるのです。半年に1回など、スパンが長くてもいいのでやろうと声をかけています。

最近では演劇のイベントも多い。その始まりは、お客さんから「ここで演劇をやりたい」と話があったことだった。

演劇の経験はまったくなく、見たこともありませんでした。話があって「どうぞ」とやってもらったのですが、カウンターからずっと見ていて、面白いなと思って。
最初は集客というイメージで呼んでイベントをしてもらうのですが、その時になってそのジャンルのことをちゃんと知ることになります。そうすると「知らなかっただけで面白いぞこれ」と思うことが意外と多いのです。あまり一般的でないジャンルの人たちは、しっかり入り込んでいる人が多いので、だからこそ面白みを伝えるのがうまいのかもしれません。新しく入ってくる人にも優しいですね。

オープンして2年以上が経つが、今も樋口さんはイベントをやりたいと相談してきた人にしばしば「まずやろう」と声をかけている。

どちらかというとマイナーなジャンルでとりあえずやりたいという人、自分が応援したい人は、通常営業で賄える日の夜や、人の少ない平日の夜、平日の午前中にイベントを入れます。アイドルタイムならお試しでできるから、他のときに稼ぐからそこは心配しないで、とりあえずやろうと。

最近朗読のイベントをやった方も、めっちゃ頑張ったんです。すごくクオリティが高いのに、自己評価が低い。「私では集客は全然駄目です」と言っていたのですが、「サンビル(サンデービルヂングマーケット)の日にやればそこで売り上げがあるから、集客がゼロでも大丈夫」と話をしました。やってみたら、自己評価が低いだけでファンはちゃんといて、お客さんはちゃんと来たのですが。「よくぞ一歩踏み出してくれた、よくぞやった」と思いました。

何かをやってみたいけれど不安で動き出せない人の背中を押す。それによって樋口さんは、その人のやりたいことを叶え、新しい文化の芽を育てている。岐阜のまちを、挑戦できる場にすることに貢献しているともいえる。
自然に日々積み重ね、「こだわりはない」「主張がない」と話す樋口さんだからこそ、さまざまなジャンルのイベントを緩やかに受け入れ、背中を押すことができるのかもしれない。

まだここがオープンして2年ちょっとなのに上から目線の言葉ではあるのですが、僕自身も、ここでイベントをやる人たちも、スタートアップだと思うんです。最初にイベントをやる場所としてはいいんですけど、それが育ったら絶対に物足りなさを感じる。そのときに離れられる場、そこに至るまでに遊ぶ場としてここは機能するのではないかと思っています。
ここはみんなの遊び場であったらいいと思います。面白いことがあるから遊んで行こうぜ、と思ってもらえるような。

駐車場代を払いたくなる、柳ケ瀬のめぐり方

岐阜は最近「面白さが加速している」と樋口さんはいう。星時があるのはその中心部、柳ケ瀬商店街の一角だ。

柳ケ瀬って、意外に集客が楽なのではないかと思っているんです。柳ケ瀬に来られない理由として、一番にあげられるのは駐車場。でも、それしか言わない。それを除いてあげれば、柳ケ瀬から離れた地域からでも来てくれるはず。近隣のお客さんを奪い合うよりも、遠くからお客さんを呼んできた方が絶対に楽です。

「柳ケ瀬は駐車場がない、有料駐車場は敬遠されるからお客さんが来ない」というのは今まで繰り返し言われてきたことだ。樋口さんの考える解決策は「無料駐車場をつくる」ではない。


このお店のためだけに有料駐車場を使うと高いと思うかもしれないけれど、半日や1日のコースがあって、それで1日500円だったら駐車してくれるんじゃないかと思うのです。
だから周りのお店と連携したり、柳ケ瀬周辺の情報を発信したりしています。車で来られないという人は、実はいろいろなお店の情報をキャッチしきれていないのだと思います。こんなにお店があって、まわることができると知ると「いいじゃん」と言ってくれる人もいます。

カフェに関しては、この周辺にはcafe 旅人の木さん、cafe re:verbさん、Honkey Tonkさん、もう少し北へ行くと喫茶ヨジハン文庫さんやYajima Coffeeさんがあります。雑貨に関してもボビンヘッドさん、やながせ倉庫さん、ロイヤル40さんがある。ご飯を食べるところもたくさんある。正直なところ、まだ服に関しては弱いですが、それ以外の充実度は高いんです。

コンテンツはとてもたくさんあるのですが、みんなにその情報が届けられていないんです。
観光地ならみんなお金を払いますよね。そういう感覚で柳ケ瀬を使ってくれればいいと思うんです。

樋口さんは柳ケ瀬の情報、県内のカフェの情報などをツイッターで頻繁に発信する。今でも休日にはカフェや喫茶店をめぐり、これまでの訪問数が1200軒を超える樋口さんの情報網は広い。県内でカフェを含めたまちづくりに関わる人たちとも親交があり、発信する情報は多岐にわたる。

最後にお店のこれからのことについて聞いてみても、樋口さんはあくまで自然だ。

計画的なことをやると破綻するので、あまり考えていないんです。でも、ありがたいことにいろいろな方から「こんなことがしたい」と言っていただいているので、それにできる限り応えて僕も遊んでいきたいです。
ここに来た人には自分なりの時間を楽しんでほしい。だからイベントも含め、楽しそうにしているのを眺めているだけでも楽しいんです。

今のところ、これからも続ける気持ちでいます。イベントが決まっているからそこまでは頑張ろうと。でも、それほど気負いはありません。「やめたかったらやめよう」と考えられなくなると、泥沼にはまって、次のステップに行くときのハードルになるのではないかと思います。続けることで執着が出るのが怖いんです。

つくりこむのではなく、あくまで自然に日々積み重ねていく。自分のことを主張するのではないからこそ、イベントを開く人のことも全力で応援できる。そうするうち、主張しなくても樋口さんの人柄が店に表れて、居心地のよい空間ができ、ファンの輪が広がっている。そんな風に思う。他のどこにもない空間であり、挑戦しようとする人を応援してくれる、地域にとって大切な空間にもなっている。

実はこのブログのインタビュイーの募集についても、樋口さんがリツイートしてくださった後に新たなお問い合わせをいただいた。応援してもらえることのありがたさと力の大きさを、身をもって知った。
それでも樋口さんは、そのことを声高に言おうとはしない。今日も自然に、笑顔で、お客さんを迎えている。

 

喫茶 星時
岐阜市神田町3-3 加藤石原ビル2F
11:00~20:30(L.O. 20:00)
定休日:水曜日・第4木曜日

1件のコメント

  1. 2年前、20年ぶりに岐阜に戻り、行く店も顔見知りもなく途方に暮れていた私は、星時に出会いました。
    それから、知り合いが増え、寄る店ができ、岐阜のまちが楽しくなっていきました。
    いま考えると、背中を押してもらった気がします。
    樋口さんありがとう。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です