ブログで自信がついて、行動が変わった。「ひと、ほん、たび」の更新を続ける上田紋さん

このブログを少しさかのぼればすぐにわかることだが、個人ブログを継続的に更新する難しさを筆者は日々感じている。執筆にまとまった時間を取るのが難しく、少しずつ進めていると、一つの記事を完成させるのにあっという間に1か月以上経ってしまう。
上田紋さんは2018年5月からブログひと、ほん、たび。」を運営し、これまで3~5日に1回以上の更新を続けてきた。どうしたら継続的にブログを更新する時間をつくれるのだろうか。
このブログには広告が貼ってあるわけではない。上田さんはブログを書き、見返し、次の行動につなげることを繰り返す中で、最近ではビブリオバトルを主催するようになるなど、行動を広げている。


上田紋さん

本を読みながら、自分を成長させるために

上田さんがブログを開設したきっかけは、ブログを書いている人の本を読んだことだった。

あんちゃさんと、はあちゅうさんの本を読みました。読みやすかったし、二人とも女性で親近感が湧きました。本には、思いついたことは小さいことでもいいからすぐ行動する、そして行動するだけではだめで、人に話したり、ブログなどに書いたりしてアウトプットすることが重要だと書かれていました。

上田さんにとって本を読むということは大切なことだ。上田さんは図書館に勤務している。
広島県福山市生まれで、小学生のころに愛知県一宮市に引っ越してきた。大学卒業後は、関市の刃物の会社で事務の仕事をしていた。

小学校のころから楽をすることに生きがいを見出していました。部活も、週に1回料理を作るだけで、時間中に宿題をやっているような部に入ったり。親の言うままに高校を選んだり、大学も家から一番近い大学の、全く興味のない学部を選んだり。
新卒のときも「とりあえず事務職かな」みたいな感じで、受かった会社に入りました。その仕事は楽ではなかったんですけど。

だんだん、このままではいけないなと思うようになりました。そう思うようになったきっかけの一つが、いろいろな本を読んでいろいろな考えに触れたことだと思います。人生は一回しかないから、死ぬときに後悔しないようにいろいろ行動しないといけない、死ぬのが怖いと思うようになりました。

当時の会社では経理以外の事務を上田さんが一人で担っていた。残業や休日出勤もあり、「これ以上は厳しい」と、転職を考え始めた。

何の職がいいかなと思った時、昔から本を読むのが好きだったことに気付きました。小学校から大学まで図書館に入り浸っていたので、図書館関係の仕事もいいなと。

上田さんは退職し、関市の大学で行われる、司書の資格取得のための短期講習に通い始めた。しかし、請われて元の会社に復職することになる。

講習が終わったら職場の人が大学に車で迎えに来て、そのまま職場に行って仕事をしていました(笑)。

その後、司書の募集に「手当たり次第に」応募。採用され、今の職場で働くようになり5年半が経つ。

上田さんはツイッターなど一通りのSNSも使ったことがある。そのときは「短い言葉をとんとん載せたりするのが楽しいとは思わなかった」そうだ。それだけでなく、以前は漫画を描いてコミックマーケットに同人誌を出し、イラスト関係のホームページも運営していた。過去の経験からブログについて「難しそう」というような抵抗感はなかったという。
ただ、イラストについては「だんだん描くのがつまらなくなってきた」と上田さん。

まわりの人は毎日絵を描いていたけれど、私はそこまで好きじゃないと気付きました。
生み出す作品の質を上げるよりも、自分に主体を置きたい、自分を成長させたい。

読書をきっかけに、行動をブログにアウトプットすることは自分の成長につながると上田さんは考えたのだ。

本では独自ドメインの取得がすすめられていた。無料のブログを使うより手間がかかるが、上田さんは以前のホームページでも取得していたので問題なくできた。そしてインターネットで調べて、多くの人がすすめている作成ソフトウェア、WordPressを使うことにした。テーマ(ページのデザインテンプレート)は、有料だが初心者向けで操作も難しくなく、機能が揃っている「ストーク」を選んだ。これも以前のホームページで、タグの入力など自力でデザインすることが増えると大変だとわかっていたからだ。
また、他の本で「自分の発言に責任を持てる」と読み、本名を使うことにした。

そして、ブログのタイトル「ひと、ほん、たび。」は、悩んだ後、ライフネット生命保険の創業者である出口治明さんの著書から着想を得た。

記録から達成感、次の行動へ

現在の図書館勤務では早番と遅番があり、上田さんは仕事のない時間や休みの日にブログの記事を作成している。写真を選び、画像サイズを縮小して、人の顔が映り込んでいるときなどは加工して、とやっていると、記事によっては作成に4時間ほどかかることもある。

更新しながら、上田さんは自分に合うよう少しずつやり方を変えていった。2か月ほどの間は毎日更新していたが「これは大変だ」と気付き、今は3~5日に1回ほどにしている。
また、最初はブログを投稿したときに自分のFacebookでシェアしていたが、途中でやめた。

Facebookでつながっている人からコメントをもらっていたのですが、周りからの反応が嫌になったんです。影響されて、自分の書きたいものが書けなくなる感じがして。
今は、ブログに「お問い合わせフォーム」はつけていますが、コメント欄はつけていません。職場の人が見てくれて、たまに反応してくれるというくらいが私には合っています。

もちろん、読んでくれている人とコメントのやり取りをするのが楽しい、喜びだという人もいると思いますが、私の場合は「自分」ですね。
自分が何かを経験してブログに書いて、それを自分がどう思うか、どう感じるか、そして次に何の行動をするか。自分の成長につなげていきたいのです。そのために、人の意見があるとそれに左右されてしまうということに気付きました。

広告も「自分のブログに自分以外の作品が載るのが耐えられない」と、載せるのはやめた。本ですすめられていたGoogleアナリティクスのへ登録はしてあるが、チェックはしていない。SEOも気にしていない。

とにかく「自分」。それが私のブログの使い方として一番合っていました。「自分成長ツール」です。

投稿を続ける中で、記事のテーマも徐々に変わってきた。「ほん」は上田さんにとって今も大切な存在だが、

本の感想を書くのは苦手だと、ブログをやって気付きました。

そして「たび」。

昔は「旅ブーム」が来て、結構いろいろなところへ行ったのですが、今はその気持ちは落ち着いています。ただ、どこかに出かけた記録を載せるのは書きやすいと思いました。

元のテーマにこだわるのではなく、そのときに興味のあることを大切にしている上田さん。ブログにはカフェ、モーニング、美術館や博物館、野球観戦、フィンランドサウナ、コーヒーセミナーなど、さまざまな場所に出かけたことが投稿されている。


今回のインタビューも、上田さんが気になっていたお店「茶洋館マサラ」のモーニングをいただきながら行い、写真撮影の様子なども見学させていただきました

とにかくすぐ行動して、その結果をブログにとりあえず書いて、それを見返して「ああ、これだけ行動したわ」と達成感を得て、満足して、じゃあ次はこれやろうと行動に結びつけることができる。ブログは大事ですね、私にとって。一応、前に比べれば、やりたいと思ったら行動することができるようになったと思います。

時には、「すぐ行動する」ということを実践する中で上田さんが経験した「失敗」も書かれている。

台風が来るとわかっているのに金沢に旅行に行って、電車が止まりそうになって、観光をせずに帰ってきたりとか。それから、思いつきでキャンプに行って、夜がとても寒くて、人生で一番寒くて死ぬかと思いました。
その後、台風が来そうな日に同僚との予定が入っていたときには、自分から諦めることができました。経験が生きているんですかね。

ブログで得た自信が、コミュニケーションの変化につながる

上田さんが以前から成長させたいと考えていたことの一つが、「人とのコミュニケーション」だ。

小学校のときから、周りの子に「面白いね」と笑われていました。「どこがおかしいの」と聞いても「全部」としか言われない。当時は自分のことを客観的に見ることができなかったので、自分の悪いところがわからなかったし、同級生も子どもだったので笑われるばかりでした。友達もつくりづらかったです。いることはいたのですが。

でも、本には人とのコミュニケーション、人間関係は大事だと書いてある。
尊敬する元上司は、職場で会った同僚に1日1回は話しかけるようにしていると言っていました。真似しようとしたのですが、なかなかできない。「今日は暑いですね」というようなコミュニケーションでも、仕事以外では話しかけづらい人がどうしてもいます。嫌いというわけではないのですが。

もっと人と関わる方法を探し、上田さんはカフェなどでの「朝活」や「ランチ会」に参加してみて、ブログに投稿した。

私は食べることも好きだし、名古屋でいろいろと開催されているのです。
ただ何回か行くうちに、確かにご飯は美味しいのですが、初対面の人と集まって共通点のない人たちと話すのは、まったく面白くないと気付きました。自分から話すこともできなくて、聞いているばかりでした。

最近はそうした集まりではなく、職場の同僚を誘ってカフェに行ったり、友人と出かけたりして、人と話す時間を増やすようにしています。人と話す経験を積めば、少しはコミュニケーションが上手くなるのかなと。

そして最近の上田さんの「ブーム」の一つが、イベントのボランティアスタッフに参加することだ。職場の同僚がプライベートで開催した親子向けワークショップを手伝ったことがきっかけだった。

参加する親子と話したりする中で、お手伝いという形でも、普段は会わないいろいろな人と話したり関わったりすることができる、普段は経験できないことが経験できると知りました。

これまで「KAKAMIGAHARA PARK MARKET」や「名古屋ビーガングルメ祭り2019」「あいちトリエンナーレ」など、さまざまなイベントのボランティアスタッフに参加した。

イベントはこういう風に成り立っているんだ、飲食店はこういうところが大変なんだと、普段は見られない世界を無料で見られるので、しめしめと。仕事と違って1日だけで、後に引くような責任が生じることもないので、気楽にいろいろな世界、いろいろな人を見ることができて、自分にとってはいい経験になっています。人やイベントの役に立ちたいという気持ちもありますが、やはり自分のためというのが強いですね。

上田さんはそんな経験の一つ一つもブログに書いている。そんな中で、人とのコミュニケーションに変化を感じることはあるのだろうか。

いろいろ経験したとしても、自分の性格の根本は変わらないと思うのです。人と話すのがとても好き、とはならない。
でも言われてみると、いろいろな経験が自分の中に積まれていって、自分の行動が広がったり考えが深まったりして、自分が成長している気がします。「こんな行動したわ」と、自分に自信がついたかなと思います。

それによって、職場の同僚を誘いやすくなったということはあるかもしれません。それから、ボランティアに応募してみようと思うようになったり。次の行動をしやすくなったと思います。自信は大事だと思います。

昨年11月からは、上田さん自身が主催して岐阜市のカフェなどで「ビブリオバトル」を開いている。参加者が本を紹介し、読みたくなった本(=チャンプ本)を投票して決定する読書会で、上田さんが大切にしてきた「ほん」の魅力を伝えられるイベントだ。こうした行動の広がりも、以前より自分に自信がついたことが後押しの一つとなっているに違いない。

また、職場で同僚と話す回数が増えたという。

同期や年下でも私より仕事ができる人はいっぱいいます。じゃあ職場で自分に何ができるかと考えると、よく人から「優しい」と言われるんです。「わー嬉しい」と思っているんですけど。
それで、後輩に話しかけて優しさをアピールしたり、聞かれたらきちんと答えたりするようにしています。自分の長所を伸ばすということですね。逆におせっかいすぎる、見守ることも大事だと言われることもあるのですが。

これも、仕事以外でもコミュニケーションを意識して行動し、ブログに書いて次の行動につなげることを続けてきたからこその変化なのかもしれない。

個人でブログの更新を続ける人には、広告収入を得ることを目指す人も多い。しかしそれだけでなく、ブログは後から特定の投稿を見返しやすく、自由な長さで投稿できるため、自分について記録し、振り返ることに向いているようだ。そしてそれを自分の自信にし、行動を変えるまでの力を秘めている。
実際に上田さんはブログを糧に行動を広げ、人生に新たな側面を増やしている。ブログは人に見てもらうためだけに力を発揮するのではない。こういう使い方もあるのだと気付いた。

そしてそれができるのは、上田さんが読書などで知ったことをまずは素直に受け入れ、真似することができるからでもあるだろう。自分なりに変えるのはそれからだ。
上田さんは人からのほめ言葉も素直に受け止めている。読み手次第で、本は人の人生を変える力を持ちうるのだ。

 

今回、初めてインタビューを受けたという上田さん。「インタビューを受けるという体験も面白そう」と問い合わせをくださって、インタビューが実現した。最後に、初めてインタビューを受けた感想を聞いてみた。

こんな感じなんだ、と。偉い人になれた気持ちがしました(笑)。

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ひと、ほん、たび。
※この日のインタビューの様子についても記事を書いていただきました。

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