なんで練習するかっていうと、その方が楽しいから。
確かに楽市JAZZ楽団の練習では、できるまで何度でもやるし、適当に済まされることがない。いくら練習したってへたくそとしか言われないし(これはメンバー同士だから言えること)、こーもらんつ23のみんなもすごく上手いので、自分が気を抜いたらいつでも首になると思うと、いつも怖い。
それでも、それを越えた先のステージの楽しさを知ってしまった。
その意味では楽市のメンバーには有利な点がある。万照先生や粥川先生やまわりの環境が、そのステージまで連れて行ってくださるから。できなくて苦しい苦しいと思いながら練習した後の、ジャズフェスのあの華やかなステージは、より楽しい。熱帯さんと出させていただいたときのあの感じは、ちょっと忘れられない。だからまた練習しようと思う。楽市メンバーはそれを知っているから、もっと練習しようと思えるのだ。別に、練習しないと怒られるからじゃない。まあ、それが日々のモチベーションになる部分もあるのかもしれないけれど、先の楽しさが見えるから、嫌なプレッシャーにはならないのだ。
練習しないアマチュアミュージシャン、というのは、その楽しさを知らないからなのかなと思う。楽市のように恵まれた環境でやっている人ばかりではない。
だけど、間違えずにできるかどうかということではらはらしているより、練習してできるようになっているときの方が、余裕があって楽しめたという経験は多くの人にあるのではないだろうか。
アマチュアだから、お金も取っていないしむしろ自分が払っているから、自分が楽しければいいと思う人もいるかもしれない。
しかし、私は何が楽しいってやはりお客さんが楽しんでくださるのが一番楽しい。見ず知らずの、今初めて会った人なのに、言葉にしていないのに音楽で何か伝わるって、奇跡だと思う。楽市で演奏していて、お客さんの顔つきが変わって、ちょっと前のめりになるような瞬間がある。万照先生のソロとか。練習したかどうかがお客さんに伝わるかどうかは正直よくわからない。自分にそれだけの耳があるか自信はない。でも、練習の結果、技が磨かれれば、お客さんに伝わると思う。楽市のステージでも、結成したころと最近では、お客さんの目のくいいり方はちょっと違うような気がする。私にすら、演奏の後に道で会ったおばあちゃんが「さっき吹いてたでしょ、よかったよ」と言ってくれたことがあって、そういうの、忘れられない。お客さんに伝えたいし、楽しんでほしい。
アマチュアミュージシャンが練習できない理由として最も多くあげるのは「仕事が忙しい」だろう。次が家庭の事情。理由はいくつだってあげられる。
でもそんな中でも努力し続ける人の姿を、特にYBC BIGBAND!に入ってからたくさん見てきた。仕事と育児で忙しい合間に音源を聴いている人。個人練習がなかなかできない分、一回一回の練習を大切に課題をつくって取り組む人。あえていくつものバンドに入り、楽器に触れる回数を増やす人。ソリストがお休みのときに積極的に代理に立候補する人。やろうと思えばやり方はいろいろあるのだ。
この記事は一月半ほど前の野々田万照先生の記事を読んで思ったことでもある。岐阜のアマチュアミュージシャンに、「人前で演奏する時はちゃんと練習してから出ましょ。(^ ^)」というお話。読んで数日落ち込んだ。その少し前のライブのソロがうまくいかなかったのは、なんだかんだ言い訳しても、練習が足らなかったからだなと。実行するのは難しい。それでも、どうしたら練習できるのか考えた試論がこの記事だ。
十分練習しつくしたなんて思ったことは一度もないし、自分がそんな境地に達することができるのだろうかと思う。自分の小ささには打ちのめされてばかりだ。私には人のことを何か言える資格は全くない。
ただ、万照先生はコメント欄で「下手でもいいんです。ちゃんと精一杯の準備さえしてくれれば。」というお話もされていた。ちゃんと、救いの余地を残してくださるのが一流の人である証と思う。楽市のメンバーのことを信じてくださっているのも嬉しかった。
練習して、いい演奏ができたら自分も楽しいし、お客さんも楽しい。そうやって楽しい輪が広がってもっと楽しい地域に、好きだって思える地域になったら本当にいいなと思う。