丸森町は優しいイメージがある。
特産品はなにより農作物。お土産売り場にも野菜が並ぶ。かぼちゃやトマト、ピーマン、モロヘイヤ、きゅうり。よく知っている野菜も安くて美味しそう。そんな中に、星型のきゅうりとか変わったものがひょいとある。
最初にグリーンツーリズムの話を聞いたせいでできたイメージでもあると思う。
でも、革新的。役場にも熱い人がいる。変えていこうとする人がいる。そう聞いてほっとする。
その前に行った兵庫県篠山市の景色は「これぞ日本のザ・田舎!」と思ったのに、どこか懐かしかったのに、丸森ではそう思わなかった。田んぼと山の景色が、どこか、私の知っている景色と違う。天気のせいだけじゃない、晴れていても何か違う。山の形だろうか、稲や山の緑の色だろうか。
田んぼの中を自転車で走りながら、どこに行きたいって、おいしいケーキが食べたい、と思ってしまった。
丸森の人に会いたかったというのもあると思う。丸森で出会った人はみんな素敵だった。カフェペルシッカのことは前に来たときにお会いした人に聞いていた。
あまり時間がないけれど店に入ってしまった。男性の店長さんはとても優しかった。めちゃくちゃ話しかけてはこないけれど、なんとなく温かい。ケーキに寄せた甘い桃ははっとするほど美味しかった。氷を入れて、ポットをからから振って入れてくださったアイスティーは、普段飲んでいるアイスティーのイメージをがらりと変える。常連さんらしき人が入ってきた。店長さんとの会話、このカタログあげるとか、ジャムの試食していただきましたっけ?とか、優しい。
残りのアイスティーを飲みながら、東京に帰りたくない、と、思う。何か東京のほうがいいことを思い出そうとして、思い出せない。でも、電車を一本遅らすと次は50分後。
ようやく立ち上がると、店長さんがドアの前まで来て見送ってくださった。
お昼ご飯のCawa Cafeも素敵だった。レンタサイクルを借りるときにすすめられた、川沿いのカフェ。昭和の古民家をリノベーションしたのだろうか。
ピザの丸森町の素材の水菜がはっとする美味しさで、鶏肉は優しい。伝統料理じゃなくても、丸森町の食の魅力がちゃんと感じられる。トマト味もしっかりジューシー。
奥ではご近所らしき女性二人組がランチ。そして後から入ってきた男女の団体はかき氷を食べに。一人は用事で電話した人に、どの味がおすすめか聞いていた。
デザートはキウイを凍らせたもののよう。そしてレジの横に並んでいて、さっきから食べたかったマフィン。時間が迫っていて、美味しいのに何味か聞けずじまい。
店を出て阿武隈川沿いを自転車で疾走。車道だけれど車は少なくて走りやすい。
その人にとってのそのまちのイメージは、そのまちで出会った人がつくる気がする。
仕事で失敗したら苦い場所になってしまう。失恋しても苦い場所になってしまう。
それでも、ほかに出会った人によって光が見えるときだって、ある。