メンバーオーディション受付中。楽市JAZZ楽団入団10年で得たもの。

岐阜市民ジャズビッグバンド楽市JAZZ楽団では現在、メンバーオーディションの参加申込を受け付けています。5月31日まで。

たくさん応募があるといい、という気持ちと、うまいアルトサックスの人がいっぱい来たら自分は首だ、という気持ちが葛藤してしまう、どうやっても心の狭い自分。

私はサックスが下手くそだ。10年やっても下手くそだし一生下手くそだと思う。
私がサックスを200年続けても見られない景色がある、と言われた。その通りだ。プロの皆さんみたいに吹けるとは一度も思ったことがない。
これから先、どんなにサックスを続けても、プロの演奏と比べられて、劣っている点を指摘される。そのことに絶望を感じたりもする。どこまでいっても私は下手くそなサックス吹きで、吹いた後にはいっぱいの駄目出しを受けるのだ。一生。
何でわざわざそんなことを続けるのだろう、と何度も自問自答した。でも、続けてしまった。10年も。

この間も、ある先生からいくらかご指摘頂いた。その時、思った。

もう、アドリブが吹けただけで褒められる世界じゃない。いかに吹くか。よい音で、かっこいいフレーズで、ちゃんと聞く人の心に届けられるか。いつどこで誰とどんな曲でも形にできるか。
ソロじゃないところで、バンドで、セクションで、どうかっこいい音を聞かせられるか。もう、音が大きい方がいいという世界ではない。もっと俯瞰してバンドに必要な音が出せるように。

気がついたら、周りの世界は変わっていた。
その世界でまた私は最底辺だ。

だけどそんな風に周りの世界が変わって、見える景色が、要求されることが変わってきたことは、どう考えても、ほんのちょっとは成長したんだろうとしか思えない。
そんな風に思えることが、人生の他のことにもよい影響を与えるのではないかというところが、楽器を続ける意味なのだろうと思う。私にとって楽器は、人間修業でもある。

10年かかってほんの、ほんの少しの変化だけれど、助けてくださったたくさんの皆様のことを本当にありがたく思う。

絶望しながらも続けてこられたのは楽市があったからだ。楽市は居場所だった。学生のときにやっていたバンドは入れ替え制で、アルトサックスがたくさんいて、私なんていなくてもいいよなあ、と何度も思った。オーディションで先生方が何か間違えたおかげで楽市に、こーもらんつ16に入ることができて、初めてビッグバンドに場所ができた。職場で毎日怒られていた私が楽しみにできた場所、そして引っ越してからは、岐阜での私の貴重な居場所になった。その場所を失いたくない、というのが、正直なところ、私の大きなモチベーションだった。毎年、首にならないか怯えている。今も、オーディション受かるのか不安で仕方がない。

そして、続けてきた最大の理由は苦しんだ果てのステージが本当に楽しかったからだ。お客さんが楽しんで喜んでくださっている顔を見ると本当に楽しい。それはもちろん私の力だけでは全然ない。野々田万照先生の演奏があり、笑わせられるMCがあってこそ。そして強力で素敵なメンバーの皆様がいてこそ。
ジャズに詳しくないお客さんが多くても、やっぱり上手いものはわかるようだ。10年の後半、バンドがだんだん上手くなってくると、お客さんが前のめりになって集中して聞いてくださる場面が明らかに増えた。だから、もっと練習しようと思う。
きっと他のメンバーもそれを感じている。私がちょっとくらい練習しても、みんなが上手くなっていくので全くもって追いつかない。

一方で、楽市だけだったらここまで来られなかった。名前とかあげきれないけれど、東京で出会った皆様にも本当に感謝している。

これからはちょっとでも、恩を返せたら。本当に何もかもまだまだな私だけれど、少しでも役に立ちたい。少しでもよい演奏をすること、そして教えるなんてレベルじゃないけど、周りをもっと気遣えるようになりたい。

そして、楽市で得たのはそれだけじゃない。Facebookページの運営を経験させていただくことができた。仕事でも役に立っている。
他にも楽市について書くことで、書いたものを発表させてもらう機会を得た。
地域と音楽という、今後の仕事において追いかけ続けたいテーマの一つを得た。ニッチだけど詳しい分野を得た。
楽市があるおかげで岐阜にも定期的に帰れるし、今も岐阜とつながっていると感じられる。自分の関わり続けているプロジェクトだと言える。

そして10年前から感じ続けているのは、たくさんの人の前で吹いたという自信。人に楽しんでもらう喜び。たくさんの人との、年齢を超えた出会いとつながり。先生も学生もなくバンドメンバー同士としてお話しさせていただいて、一流人を真近で見て、若者の急成長を見て。そこに身を置いて、自分はどう振る舞えばいいのか。それもまた人間修業だ。

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