2016年10月21日に起きた鳥取県中部地震。倉吉市などでは震度6弱を観測した。
倉吉市中心部の白壁土蔵群では壁が崩れるなど、大きな被害を受けた。
鳥取県の観光入込動態調査によると、倉吉市を含むとっとり梨の花温泉郷の宿泊客は2017年まで2年連続で減少している。昨年は鳥取県全体で減っているみたいだけれど。
2016年の4月に、仕事で訪れていた。
メインは、倉吉市中心部からバスで30分ほどの関金温泉。雨の日だった。
旅館の数は最盛期から大幅に減り、ランドマークとなっていた老舗旅館も廃業してしまう。
でも地域の皆さんが力を出し合い、地域おこし協力隊として来られた西河葉子さんも大きな推進力となり、「関金しゃあまけ笑会」を設立、その旅館の露天風呂を足湯に改装したり、旅館を改装してカフェを開いたり。
結構荒廃していたので、改装は本当に大変だったという。「セキガネ温泉手作り文化祭」というイベントも始めた。
そのときの記事がこちら。
人と人がつくる地域おこし協力隊のしごと 鳥取県倉吉市関金地区
本当に優しい方々だった。取材中、関金温泉唯一のコンビニでスイーツを買って差し入れてくださったり、余ったからと2個目まですすめてくださったり。写真撮影のお願いをしたら、坂の上と下に分散するポイントを車で回ってくださったり。その温かい感触は今もよく覚えている。
地震の時には大きな人的被害はなかったものの、温泉施設の天井が落ちたり、断水があったり、泥水が出たりしていた。少しして復旧したけれど、予約のキャンセルが相次いだらしい。
それでも、翌2017年には「関金温泉開湯1300年」が控えていた。
「源泉回帰」をテーマに、さまざまな人が力を合わせて記念すべき年を形にした。メインイベントはその年の秋に。「健康と温泉フォーラム」やトレッキング、たたらのワークショップなどが行われ、多くの人が訪れたようだ。
西河さんは地域おこし協力隊の任期終了後「西河商店」を立ち上げ、関金の特産品であるわさびや、それを加工したわさびオイルの販売など、精力的に活動されている。
私が訪れたころから、地域の活動はたくさんの困難にぶつかっていた。無理なく続けられるような形が見つかったらいいなと思う。
関金は移住先としても人気があるという。訪れたときには、空き家が足りないくらいだとも聞いた。新しい活動には移住してきた方々の力も加わるのかもしれない。
関金温泉、「鄙びた温泉好き」の方には特におすすめ。どうも全国にはそういう方が一定程度いるらしい。
共同浴場「関の湯」。こういうのが垂涎ものという方もいるという。
そこまで偏った趣味ではないという方にも。わさびが育つほどきれいな水が流れ、自然と、静かな雰囲気と、温泉街の情緒と、温かな人情を一か所で味わえる場所。
足湯。
人里を離れたいとき、静かに過ごしたいとき、こんな場所にいられたらいいなと思う。
倉吉市役所でも取材をさせていただき、その後で白壁土蔵群を見た。
4月も終わりに近かったのに、雪。まともな写真が残っていない。
ランチの場所を探しながら震えていたら、前日に関金でお会いした方にばったり、近くでお店をされているとのことだった。
「私は今お昼食べてきたから一緒に行けないけど」と言いながら、おすすめのお店を教
えてくださった。
町屋 清水庵さんの「餅しゃぶ」。初めて食べた、そしてその後もお目にかかったことがないメニュー。12色の、栃餅とかブルーベリーとかの餅をだしの中にくぐらせる。おいしかった、そして温まった。明治時代の建物とのことだけれど、広くて落ち着けて、現役ばりばりという雰囲気があった。
ちなみに倉吉市の白壁土蔵群のあるあたりは「ひなビタ♪」というキャラクターバンドコンテンツの舞台のモデルにもなっている。キャラクターバンドコンテンツ、とは、キャラクターによる架空のバンドの活動やストーリーがウェブとか曲とかで展開される、というようなもの。
地震の後、白壁土蔵には文化財の専門家も入って、ただ見た目を元通りにするだけではなく、家の構造を丈夫にするような修復が行われているそうだ。
その後、日本版DMOにも登録された「鳥取中部観光推進機構」などを中心に、観光の取り組みも進んでいるらしい。
また、行きたい。温かい人に会いたい。
あと、梨も食べたい。