ストーリーのあるプレゼントを、コミュニケーションのきっかけに。オリジナルアクセサリーを中心にオンラインギフトショップ「-Kaninchen-」を運営するかわほり兎々さん


右上:ToiToiToi!-002 (ステキな梅雨の日)、左下:ToiToiToi!-001【いつもの晴れの日】、右下:ToiToiToi!-003 【夏の夜】

オンラインギフトショップ「-Kaninchen-」(カニンヒェン)のページを開くと、オリジナルアクセサリーに使われた石の美しい色が目に飛び込んでくる。一見して、心奪われる。そしてさらに、運営・制作するかわほり兎々さんにお話を伺うと、アクセサリーに込められたたくさんの思いが、美しさに奥行きを与えているのを知ることができる。
アクセサリーを「贈ってもらえるものにしたい」と話すかわほりさん。現在、アクセサリー以外のオリジナルグッズも準備している。制作しながらかわほりさんは、プレゼントをきっかけに流れる時間、引き出される思考にまで思いを馳せている。


かわほり兎々さん

自分の「好き」に素直に

「-Kaninchen-」のアクセサリーに使われている石は、約50〜70年前にドイツでつくられたもので、ヴィンテージビーズと呼ばれる。多くはガラス製だ。


左から「Liebling-006/騎士の忠誠」、「Liebling-004」、「Liebling-010 【ロシアンブルー】」、「Liebling-008 【交錯】」、「Liebling-003/深森

ビーズ自体がすごくきれいな状態で残っているので、それが埋もれないようにしています。石がどういう風に見えるか、どういうイメージを与えるか、考えながら制作するんです。

制作しているアクセサリーは「ジェンダーレス」だとかわほりさんは話す。レディース、メンズと分けるのではなく、誰にでもつけてほしいと考えているのだ。

アクセサリーをもっと自由に楽しんでもらえたら、と思っています。自分がつけたいものをつける、ということでいいと思うんですよ。
うちのアクセサリーには若干ゴツいデザインのものもあって、男性でも似合う方、こういう路線が好きな方がいらっしゃると思います。
例えば苺のアクセサリーがあるんですが、実はこれも男性にもつけてみてもらいたいんです。似合う人がいると思うんですよね。


苺のビーズを使った「Schnucki-003【いちご狩り】

最近は洋服でも「ジェンダーレス」が取り上げられるようになってきました。メンズの型紙を使って、サイズを縮めるだけで女性用のスーツを作っているブランドもあります。

もちろん、周りに対して自分をどう見せたいか、などということもあると思います。それでも、自分の好きなものを好きなようにつけてもらいたい、自分の「好き」に素直になってほしいという思いが根底にあります。
ネットショップだと、カテゴリーを決めるときにレディースかメンズか選ばなければなりません。しかし、そういう枠組みにとらわれないで、自分がつけたいものをつけるということがもっと広まってほしいです。

かわほりさん自身もこれまで、なかなか自分の好きなものを素直に言えなかったという。

抑圧されて生きてきたと思います。普通にならなきゃいけない、一般的でなきゃいけないと。
会社では「不思議ちゃん」と言われていたし、好きなアーティストのこともネタにされがちでした。それであまり自分から言わなくなって、話すときもオブラートに包んで「アニメも見ますよ」くらいの感じにしたり。自分の思う「普通」と世間の「普通」が乖離していることが多くて、面白がられてしまうんじゃないか、「変な人」と思われてしまうんじゃないかと、窮屈な思いをしていました。
そういう経験をされている人はちょこちょこいるんじゃないかと思うんです。

でも私は最近、自分の思いを受け入れて、「自分はこれが好きなんです」と臆さず言えるようになってきました。
好きなんだという事実はそこにあっていいと思うんです。相手がそれを嫌いだとしても、自分が好きであることが悪いわけではないじゃないですか。そういうところが尊重されれば、もっと生きやすくなるんじゃないかと思うんです。

そういうマインドの部分も、アクセサリーを通してその人の中に根付いていったら素敵だなと思います。

コロナ禍を本格的な活動のきっかけに

実はかわほりさんは自分でつくるようになるまで、「-Kaninchen-」で売られているようなアクセサリーは自分ではつけていなかったのだそうだ。

ゴシックとか近世ヨーロッパ的な服装が好きだったので、ゴツめのシルバーアクセサリーなどを使っていました。でも、起源が古いという点では今つくっているのと通じるものがあると思っています。

ゴシック系の服を着ていた10代のころ、ミニハットが出回り始めたが、周りにはつけている人もつくっている人もおらず、「お小遣い稼ぎ」にと自分で作り始めた。その後洋服などもつくり、行き着いたのがアクセサリーだった。

イベントに出店し、手売りした。就職してからも続けていたが、仕事があると土日も疲れて何もできないこともあった。「できるときにしかできない」というペースではあったが、年1回イベントで新作を披露するなど、活動を続けていた。

売り上げが上がらない時期があるのは大変でしたが、とはいえ諦めきれなかったのです。

そんな中、今年に入って「本腰を入れて」活動するようになった。

コロナで「暇」だったんです。在宅勤務になって、家にいる時間がちゃんと取れたので、本当に自分がやりたいことは何かというのを見つめ直す機会になりました。このタイミングの影響がやはり大きいですね。

通勤は週1日、あとの4日は在宅勤務になった。往復で2時間かかっていた通勤時間を使えるようになり、通勤で疲れることもなくなった。
コロナ禍もあり、現在は手売りはせずオンライン販売のみとしている。時間的、体力的余裕ができたかわほりさんは、制作だけでなくSNSでの発信も始めた。

セルフブランディングは大事です。最近では、どの店で買うかではなく誰から買うかということが重要視されています。私自身も、好きなスタッフさんがいる店に行きがちです。
商品を売ることは誰でもできますが、どういう人がつくっていて、どういう思いが込められているか、というのは今後販売する上で重要になってくると思います。

私はそんなに喋るのが得意ではなく、アドリブが効かないんです。なので考えていることを文章にして、日頃からnoteに書いたり、Twitterで小出しにしたりして発信する方がまとまりやすいんです。

こうした発信を始めてから、「-Kaninchen-」の売り上げは約2倍に伸びている。

プレゼントはコミュニケーションツール、相手に聞いた方が喜んでもらえる

かわほりさんは今後の「-Kaninchen-」について、アクセサリーだけでなく、ギフトショップとしてのラインナップに力を入れたいと考えている。かわほりさんは以前から、プレゼントをするのが好きだった。

プレゼントには、コミュニケーションツールとしての側面があるんです。私は誕生日や記念日だけでなく、日常的にケーキやお花などをよくプレゼントしています。そのやり取りで、会話が生まれたり、「ありがとう」と言ってもらえたり、落ち込んでいる相手がちょっと元気になってくれたりすることがある。人の感情を動かす側面があるのです。そういうタイミングに携われたらと思います。

実は筆者はプレゼントを贈るのがあまり得意ではない。何を選んだら喜んでもらえるのかと悩み、なかなか決まらず時間ばかりが経ち、苦しくなってきてしまうのだ。

身近な人なら、例えば一緒のタイミングで食べられるものが気軽だと思うんです。でも遠方の人なら、やはり好みをリサーチするしかありません。

ただ、「こういうことをしたいんだけど好きなものある?」「ほしいものある?」と聞くのは、コミュニケーションのきっかけになります。サプライズも素敵なので私は好きなんですが、身近じゃない方へのサプライズ、つまりリサーチをしないでお渡しすることは、贈る方も喜んでもらえるか心配だと思います。
「(相手のほしいものを)察しなきゃいけないんじゃないか」と思うかもしれませんが、相手に聞いた方が喜んでもらえる可能性は高くなる。ほしいと思っていても自分ではなかなか買わないものもあると思うので、そういう方向性で聞けるといいですね。

プレゼントを選ぶ過程も楽しむ、コミュニケーションの一環として楽しめるやり取りが発生すると素敵だなと思います。

「-Kaninchen-」は「贈る人、贈られる人を笑顔にする」をテーマに掲げる。贈る人のことも気にかけるかわほりさんは、何を贈ったらいいかわからない人を助ける、ギフトコンサルティングも実験的に始めている。

贈ったからにはできれば喜んでもらいたいと、みんな心の中では思っている。そこをお手伝いできたらなと思います。関わる人が全員幸せになったら一番いいですね。

プレゼントとして選ばれるものはさまざまだが、その中でアクセサリーを選ぶ魅力はどんなところにあるのだろうか。

私が扱っているヴィンテージビーズは、バイヤーさんに渡ってくるまでに、おそらくいろいろなところを転々としています。いろいろな人の手を渡って、時間がつながっているんです。
それがさらにプレゼントとして渡っていくと、今度は贈った人が相手と一緒にいる時間や、相手とそのアクセサリーが一緒に過ごす時間が生まれます。アクセサリーを贈ったら、次に相手と遊ぶときに、それをつけてきてくれるかもしれない。贈った側は、ずっとそれを大切にしてくれているのを見ることができます。そして、そこで会話が生まれる可能性もあります。

(贈ったことが)形に残るというのは、アクセサリーを贈る利点ですね。それだけでなくアクセサリーは、渡すことをきっかけに思い出が作れるものだということも意識しています。


左上:Liebling-005、右上:ToiToiToi ‼︎ -006 【Crystal】、左下:ToiToiToi!-004【幸せのお守り】

選び抜いた品々を

かわほりさんは「-Kaninchen-」に、オリジナルのマグカップやハンドタオル、Tシャツなど生活雑貨のシリーズを新しく加えることを決めた。「アクセサリーとはだいぶ雰囲気が変わってキャッチー」だとかわほりさん。現在、製品化などの資金についてクラウドファンディングを行っている。



ちなみに「Kaninchen」はドイツ語でうさぎの意味。かわほりさんがうさぎ好きというだけでなく、ヨーロッパや日本でうさぎが縁起のいい生き物とされていることに由来する。

また、実はかわほりさんはタロット占いも行っている。始めたのは子どものころだが、今年に入って知人の依頼で占ってみたところ「案外当たっているというか、解決のきっかけにはなっているようで」。知人以外でも占えるのか、「Cocan」というサイトに出品して試し、手応えをつかんだ。今は「-Kaninchen-」にもタロットのメニューを加えている。

ラインナップが増え、「-Kaninchen-」はギフトショップとしてますます充実していきそうだ。

あまりいろいろやりすぎると「雑貨屋さん」になってしまうので、うまく「セレクトショップ」感を残してやっていけたらいいなと思います。

「-Kaninchen-」のアクセサリーの写真を一目見るだけで、きれいだな、いいなと思う。それからかわほりさんのお話を聞くと、もっといいなと思う。ほしくなるし、贈りたくなる。
「もの」の中に思いが込められ、流れる時間が封じ込められている。それをきっかけにコミュニケーションが生まれ、それが新しい持ち主の元へ渡ると、込められたものが解き放たれて動き始める。そんなストーリーのあるプレゼントを贈ってみたいと思う。贈られた側がそのストーリーの全てを知らなくても、贈る側の喜びは深まりそうだ。

相手が喜んでくれれば贈る側も嬉しい。長時間悩まずに選べればなおさらだ。察しなくていい、相手に聞けばいいというかわほりさんの言葉に、少し気が楽になる。素敵な品々に加え、贈る人に優しく寄り添ってくれるのが感じられることも、「-Kaninchen-」の魅力なのだろう。

 

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-Kaninchen-
クラウドファンディング「『毎日を一緒に過ごす-Kaninchen-の生活雑貨シリーズ』を体験して欲しい。」(2020年10月18日まで)

全ての画像提供:-Kaninchen-

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