自ら動けば、人と話せば、自分の未知の可能性に気付ける。専門学校から大学編入を目指し、挑戦を続けるFukuさん

専門学校から大学に編入できることをご存知だろうか。大学編入試験の受験資格は大学や学部によって違うが、指定された専門学校を卒業して「専門士」の称号を得ることで受験できる大学も多い。「大学編入専攻」というコースを設けている専門学校もある。
Fukuさんはこの、専門学校の大学編入専攻に所属する2年生だ。現在は専門学校の卒業論文執筆に向けた研究を進めつつ、秋に多くある大学編入試験に向けた準備をしている。専門学校入学後、Fukuさんは自分のこれまでの経験から研究テーマを見つけた。学業以外でも、悩みの克服や将来の仕事につながる新たな挑戦に積極的だ。

専門学校から大学編入への道のり

Fukuさんは高校3年生のときに大学受験をしたが、希望の大学に不合格。当初は浪人することも考えたという。
専門学校の大学編入専攻のことは、知り合いが通っていたため高校生のときから知っていた。

浪人して1年間勉強だけするというのは、私にはネガティブな未来しか見えませんでした。もっと新しいことをしたいと思ったのです。

高校卒業後、Fukuさんは専門学校の大学編入専攻に入学。その学校のカリキュラムでは、1年生の前期にさまざまな学部の授業を体験し、その後専門分野を決めて卒業論文を執筆する。Fukuさんは法学、経済学、社会学、英米文学などを少しずつ学び、社会学を専門に選んだ。

そのときはまだ、卒論で研究したいことがはっきりしていなかったのですが、社会学は法学や言語学など、いろいろな学問と結びつきます。
そして社会学では、いろいろな学者が世の中を言語化しているのが面白いと思いました。例えばデュルケムの自殺論では、自殺の種類が4つあって、この人はこういう心理状態にあるとか。言われてみれば確かに人はそう思っているなと。

その後、卒論では教育に関するテーマを扱うことに決めた。卒論の方向性を決めてから、編入試験を受ける大学を決めるというのが一般的な流れだ。編入試験を実施している大学を調べ、興味のある学部の教授について一人ずつ、専門分野をチェックしていく。どの教授のもとでどんな研究をしたいのかと考え、志望理由書を作成して出願するのだ。

昨年から探し始めて、この人かなと思った教授がいたのですが、やっぱり違うなと思って。見つからなくて研究に集中できない時期もありましたが、今年の7月にやっと行きたい教授が見つかりました。

今は志望理由書を書いたり、編入試験で課される英語の過去問題を解いたりしている。試験では研究内容も評価されるため、卒論にかかる研究を進めることも重要だ。

自ら行動すれば、得られるものがあるから


卒論で教育を扱うことに決めたのは、対話の会というイベントで出会った人と話したことがきっかけだった。これは中学生から大人までの3~4人が一組になって、これまでの人生などについて話をするものだ。

その人は、自分は人の目線を気にするところがある一方で、障がい者や不登校の子を支援するNPOをやっていると話していました。自分も人の目線を気にするところがあるので、マイノリティの人に教育をすることに興味を持ったのです。

人の目線を気にするというのは、どんな感じなのだろうか。

電車や教室などで人の目線が気になって、息苦しいような感じになります。話すときも、人の目を見て話せない。見たら、睨むように見えてしまうのではないかと思うのです。

Fukuさんがそれを感じ始めたのは、中学生のときだった。

中3のとき、部活でも教室でも人間関係が悪くて。「ぎしぎし」した感じでした。
部活は女子だけのソフトテニス部で、同じ学年に5人いたのですが、そのうち3人が順番にハブられるとか。変ですよね。ある時、他の子と目を合わせたら、相手の目が恐かったということもありました。
教室でもいじめやけんかがありました。

高校ではいじめはなく「普通に楽しかった」そうだが、「他人の意見に合わせていたかもしれない」とFukuさんは話す。高校2年生からの10か月のフランス留学、そして専門学校への入学後も不安は続き、悩んでいた。

仲のいい人には「自分を変えたい」と話していました。変えようとしていたけれど、何も変わっていませんでした。

不安を克服するためにFukuさんが始めたのが、「話しづらいと思っている人に自分から話しかける」ということだ。

話しづらい人に話しかけるようにしたら、意外と自分も楽しめたし、相手からも「楽しかった」などと言ってもらえました。

「面白そうな人とは仲良くなりたい」と話しかけてみたりもしたそうだ。これは簡単なことではない。筆者なら「こちらが面白いと思っていても相手はそう思っていないかもしれない」と、躊躇してしまうところだ。

でもそれは相手の意見であって、自分からは話しかけてみようと。断られることもありますよ。しゃべるのを断られることはないけれど、お願いごとをして断られることはあります。

筆者なら、断られたら心折れて、別の人に話しかけるのも億劫になってしまいそうだ。Fukuさんが話しづらい人、仲良くなりたい人に話しかけ、それを継続するモチベーションはどこから来ているのだろうか。

今まではいろいろなことを人のせい、環境のせいにしていました。同じ部活にそういう子がいたのは環境に恵まれていないとか、フランス留学も行きたくなかったのに、行ったせいで大学に落ちたとか。
でも、自分から行動したときには、変わったことや得られたものがありました。例えば対話の会で出会った人のおかげで、教育の研究をすることにしたりとか。
人のせいにしていても仕方がないと気付きました。不安もあるんですけど、人と話すと自分とは違った視点が得られて、自分の未知の可能性に気付けるんです。

対話の会は、Fukuさんが自らFacebookで見つけて参加したものだ。他にも「子どもが教える学校」というイベントに、先生役やプロデューサーとして参加し、子どもの観察力のすごさを知ったりもした。自ら動くことで得られるものは大きいと知ったからこそ、Fukuさんは話しかけることを続けているのだ。

フランス留学は周りのすすめで行ったものだった。その経験より、近距離でも自らの意志で参加した場のほうが、多くの発見に出会えているようにも見える。

フランスでも、人と話そうと頑張ってはいました。でも目的がなかったのです。自主的に行っていたら、得られたものもまた違ったのではないかと思います。

仕事をする前に、自分の可能性を広げる挑戦を

専門学校の卒論では、いじめが起こっても解決されない理由を、先行研究を読み解きながら論じていく。大学ではそれをさらに発展させ、教育における自由と平等の割合について研究するつもりだ。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大による状況が、大学編入試験の準備をするFukuさんの意欲にも影響を与えている。

今、大学はオンライン授業になっています。この先もずっとオンライン授業かもしれない。そうしたら先生と一対一で話すこともできないかもしれない。それはどうなんだろうと。私の研究は実験器具がいるようなものではなく、一人でもできるということもあります。

Fukuさんは今、編入試験の準備をしながら、他にもさまざまなことに取り組んでいる。noteの更新をある期間毎日続けたほか、YouTubeチャンネルも始めた。

将来は仕事をするんですけど、その前に今は、いろいろなものを知りたいです。
YouTubeでは、自分で稼ぐという経験をしたくて。私は大企業で働くのは向いていないと思うんです。指示に従うということが向いていなくて。自分で仕事をすることも考えています。
noteを書くのは、自分の思いを整理することができるというのが大きな理由です。それと、他の人が見られるものなので、人に伝わる書き方ができるようになりたいとも思っています。そのために、記事ごとのアクセス状況を見たりもします。

さまざまなことに挑戦しているFukuさん。将来の具体的な仕事はまだ見えないが、その先に思い描く世界がある。

それぞれが好きなことをできて、憎しみが少しでもなくなるような世界ですかね。理想なんですけど。

挑戦を続けるFukuさん。どこにあるかわからない自分の可能性を探して、自分をさまざまな方向に掘っている。

そんな風に、あちこち掘ってみる、ということを、もうずっとしていない気がした。Fukuさんは20歳。一生の間に自分の道を極めたいと考えたとしても、まだ方向を探す時間も、うまくいかなければ撤退する余裕も、たくさんあるのだ。それが若いということか、若いっていいな、と思ってしまった。
そんな私にFukuさんは「でもやりたいことが見つかっているのがいいなと思います。自分はまだやりたいことが見つかっていないので」と話してくれた。そんな風に見えるのかと、発見だった。Fukuさんが独自のまっすぐな視線を持ち、感じたことを相手に伝えることができるからこそ、話しかけた相手も楽しめるのかもしれない。

これをやりたいと思うと、それをやり遂げることに必死で、それとかかわりない新しいことになかなか手が出せなくなってしまう。また、確実にやり遂げられるように、自分にとって話しやすい人の中で完結させようとしてしまうときもある。少なくとも私はそうだ。
でも本当は、失敗を恐れず全く新しいことをやってみることも、自分から遠そうに感じる人に自らアプローチしてみることも必要なのではないかと、Fukuさんのお話を聞いて思う。何歳になっても、自分の未知の可能性はまだ残されているかもしれないのだ。

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Fukuさん note  Twitter
※写真はイメージです。

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