文化財マインドのある観光の人。

学芸員の一番の仕事は文化財を次の時代へつなぐことなんじゃないかと思う。
もし文化財が壊れてしまったら、これまで長い間受け継がれてきたものに、次以降の世代は触れられない。これまで脈々と受け継がれてきた大事なもののバトンを受け取って次につなぐ、それは専門性を持つ学芸員にしかできない仕事だ。
文化財を観光に活用することは、ぜひやるといいと思う。自分の住む地域に文化財があって、それが他の地域の人が見に来たいと思うくらい魅力的だったら嬉しいし、自分の住む地域を好きになるきっかけにもなるだろうと思う。

学芸員が観光マインドも持てるならそれはいいと思う。
でもそのために一番の仕事をおろそかにはできない。
私は、学芸員の知識を持つ人が観光の仕事をやればいいのではないかと思う。
そうすれば、観光に活用しようとしたときに、文化財を守るためには難しいと学芸員に言われても、それならこういうやり方はどうですかと提案ができる。
それだけじゃない。自分で専門書や研究論文を読んで、観光客にどう伝えたらわかりやすいか、おもしろいか、考えることができる。学芸員に解釈について反論されても、自分なりに調べつくせば、それも一つの考え方だと認めてもらえるかもしれない。
私は広報の仕事をしていたけれど、そのときも学芸員の知識は役に立った。この場所でのロケがだめならこっちではどうかと提案したり、ディレクターさんの書いた台本を研究に反しないように直したり、そうしたら長すぎると怒られて短くしたり、研究書を読んでできるだけわかりやすく原稿にしたり、イラストを描いてもらったり。

そんな専門知識を持つ人はそんなにいないと思われるかもしれない。
でも学芸員というのはとても狭き門だ。つまり試験を受けるそのほかのたくさんの人がいる。文学部というのは取れる資格が少ないので、とりあえず取ってみるという人も多い。多くは一般企業に就職していく。公務員になる人も少し。学芸員の知識がなかなか生かせない仕事も多い。文学部で学んだことが仕事に生かせるなんて、教員じゃない限りそうそうないだろうと諦めている人が多いと思う。
確かに資格を取るだけなら、生きた知識がそれほどなくても取れてしまうことが多い。自分がそうで、学芸員的な知識は市役所の文化財係にいたときに学んだ。でも、学芸員の資格を取って、学芸員的な考え方の素地のある人を、文化財にかかわる場面のある仕事で育てることはできないだろうか。
文化財を観光に生かそうとする「日本遺産」などが生まれてきた今こそ。

岐阜市では私の大先輩の学芸員の方が都市建設部に異動した。
その知識や経験があるからこそできる観光や、まちづくりがあるはず。
そんな動きは他の地域でもあるのかもしれない。
文化財マインドのある観光担当者を育てるべきなんじゃないか。

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