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4コマ漫画「偉大なるいしお先生」「しょぼすぎる意志雄の日常」を、SNSで6年以上にわたり毎日アップし続ける漫画家の石田意志雄先生。前編では漫画のこと、子ども二人がいて住宅ローンも抱えながら漫画家として独立し、いくつものデザインの仕事を受けるようになるまでを伺った。後編では、フリーランス3年目の今思うこと、子どもに伝えたいこと、新作のコンセプトなどを伺う。
なんと意志雄先生自ら表紙画像を描いてくださった。ありがとうございます!
石田意志雄先生
――フリーランスになってよかったと思いますか。
思いますよ。もうサラリーマンには戻れない。
フリーランス3年目で、デザインの仕事も舞い込むようになって、やっと走り出せるようになってきました。時間はかかったけれど、間違っていなかった。辞めてよかったとしか思えません。
「よう決断したね」とか「何してんの」とか、いまだに言われます。僕も昔は、フリーランスは不安だという思いしかなかったけれど、いざ辞めてみると、なんとでもなるなと。漫画家としてはなんともなっていないのですが、そんな自分でもなんとか生きていけている。
時代が変わってきています。会社員だからいい、フリーランスだからいいという時代ではない。何が正解かわからない。そんな中で、自分がやりたいことをやっている人がいちばんいいと思います。それがお金につながるかどうかは後で考えればいい。とにかく、楽しいことがあるならそれをやるのが一番。
会社に行ってすごく楽しい仕事で毎日充実して生き生きしていたら大正解。僕みたいによくわからないことをやって楽しいしぎりぎり食えている、それも大正解。何が大正解かは人によります。
とにかく好きなことを見つける。難しいんですけどね。やりたいことが見えている人は、そこに向かうのが一番だと思います。
「gift & wear tRonchi」。これは冬に撮影しましたが、最近はフラッグと花が飾られているそうです
――その思いは、意志雄先生を見ているお子さんたちにも伝わっているのではないでしょうか。
伝わっているといいんですけど、どうなんでしょうね。子どもたちはバスケにはまっていて、僕はアシスタントコーチや審判をしています。子どもたちとの時間がしっかり取れている。大人になったときに、何かいい影響があったらいいと思います。
自分の父親はサラリーマンで土日も仕事をしていて、子どもの頃はあまり接点がありませんでした。今も実家に帰って二人きりになると話すことがないんです。それを考えると、父親の影響も多少は必要なのではないかと思います。いろいろな姿を見せておけば、大きくなったときに何か思うことがあるはずです。「いしお先生」みたいな漫画でもなんとかなったので、自分だってなんとかなると思ってくれれば最高ですね。貧乏でもアイデア次第でなんとかなる。高価なものが一切なくても、笑いあっていられたら温かい家庭だと思います。
これからの人生、先のことなんて考えていない。今のことだけ。今が楽しければこの先も楽しいでしょう。
普通に考えたら、これから子どもにお金がかかって、稼がなければいけなくなる。でも、そうなるかはわからない。明日のことはわからない。今面白いと思うことを一生懸命やっていこうと思っています。
サラリーマンの方がもちろん安定していたし、お金もたくさんあった。でも、「だから何」と今でも思います。お金があってよかったかといえば、そうでもなかった気がする。
日々自分がどれだけ心満たされているか、充実しているかが大事です。サラリーマン時代は一日一日があっという間に終わっていました。でも今は時間が自由。今日、何もせずにどこかへ行くこともできます。最初はそんなことをして大丈夫かと思ったのですが、「自分の人生だから自由に使っていいでしょ」と思うようになりました。
お金の問題は確かにフリーランスと切っても切れないものです。毎月、保険料やらなにやらあるし、すごく不安でしたが、なんとかなっています。なんとかなるのです。お金の問題で縛られるのも人生楽しくない。これは岐阜の狭くて広いつながりがあるからこそやっていけるとも感じます。
サラリーマン時代、家に帰って漫画を描くことで、辛いままではなく、自分がクスッと笑って一日を終えることができました。ストレス解消というか、自分を助けるためのツールでした。笑いは大事。どんなに辛いことがあっても笑い話にすれば何とかなりますから。
今本当に、生きてるなと思います。「あー生きてるわー、これが人生か」みたいな。やっと「自分の人生」みたいになってきました。
今までは変な常識、固定観念に縛られていました。大人ならどこかに就職して定年まで働いて年金で暮らす、というような。本当にそうなのかな、大人になったからこそ自由でいいんじゃないかと思うんです。
今はブログやSNSなどが簡単に持てる時代。もっとみんなどんどんあほなことをやればいいと思うんです。恥ずかしがる人、やりたいけれどやれないという人は、もったいないなと思います。構えることなくやれば、気楽な楽しい人生になる。自分が楽しいと思っていることは、他人に何と言われようが大丈夫。「あっそう」で片付けられます。自信のないところ、繕ってしまっているところを言われたときに、変なストレスになったり、辞めたくなったりするのです。
僕は本当に楽しい。好きなことを見つけてよかったなと思います。そして、うまく脱サラできて本当によかった。もし相談を受けたら「楽しいから今すぐやったほうがいい」と言うと思います。自分のまわりもフリーランスの人が多い。それが自然で当たり前の、いい時代になってきました。変な常識に縛られずに、面白かったら「やろうぜ」と言える柔軟な大人が周りに多くて、時代が変わってきているのをひしひしと感じます。自分が売れていないのに生きていけるのは、こういう時代だからこそ応援してくれる方、認めてくれる方が多いからだと感じています。
漫画というより、僕の生き方なんですよね、面白さは。自分で言っちゃった。「見守る系」なんです。「この人どうなっていくんだろうか、ここまできたら見届けたい」と。
――これからどんなことをやっていきたいですか。
変わらないですね、きっと。デザインの仕事も入ってきましたが、漫画はやりたい。新作の漫画も用意しているので、頑張りたいと思っています。1回くらいバズってみたい。欲が出るとだめなんでしょうけどね。これだけ4コマ漫画を描いてきて、本当に自分のことしか考えていなかった。何が流行っているのか研究しないと。世の中でヒットしているのって何なのか。それに合わせた漫画を発表しようと思っています。
そして1月、「NYANKLE BREAK」が発表された。猫とバスケの漫画だ。10コマの漫画で、インスタグラムで横にスライドしながら読む。
猫漫画はたくさんあります。猫とバスケというのも探せばあるかもしれないが、猫とバスケと言えばこれ、というものはないので。
僕はどうしても落ちをつけようとしてしまう。でも、SNSで人気の漫画を見ると、面白いものもあればほっこりするものもあります。世間はお笑いを求めている人だけじゃない。安心感や癒しも含めて総合的に考えなければならないと思っています。
その後も、「偉大なるいしお先生」で4コマの形にとらわれず、右へスライドしながら見る10コマ形式のものなどを発表。2月には毎日更新する漫画の長年のタイトルを「偉大なるいしお先生」から「意志雄のしょぼすぎる日常」に変えた。コマ割りも縦1列の従来型の4コマから、Facebookやインスタグラムで見やすい1ページの形にした。
思いついたらどんどんやっていこう、と。今は全員がすぐに発表できる時代です。もし誰かが先にやっていたら「なんでやらなかったんだ」と後悔してしまう。早くやらないと。
「大便寺りきむくん」という漫画を出したときも、名前が「降りて」きたときに「これ早く出したい、やばいの考えちゃった」と思ったんです。
「今、本当に楽しい」と、すっきりと言い切る意志雄先生。「楽しい」と繰り返す意志雄先生。こんなに、「楽しい」と言い切って生きることができるのか。衝撃を受けた。自分もそんな風に生きたい。心の底から「楽しい」と言い切れる、「自分の人生を生きている」と思える、毎日にしたい。
意志雄先生は特殊、自分には無理、なんて思いたくない。 子どもがいて住宅ローンがある意志雄先生にだって、行動を起こすことができるのだ。そしてその後もやっていくことができるのだ。そしてそれを支えるのは「まじめさ」だ。会社に勤めるかどうか、だけが問題ではない。きっと自分にもできる。きっと誰にだってできる。
楽しく生きよう、ということですよね。自分が楽しいと絶対に楽しい。ポジティブですよ、僕は。明日のことなんてわからない。死ぬ瞬間に、ああ楽しかった、いしお面白かったーって思いながら死ねたら最高、後悔はない。そのために、毎日おもしろいことをやっていかないと。
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